完全なハウスワイフ2.0になるための四カ条

 このようにハウスワイフ2.0現象は日米で同時多発的に進行しつつあり、時代の最先端を行く。そんななか刊行された本書は、当事者である女性読者からのみならず、ニューヨーカー誌やニューヨークタイムズ紙といった信頼メディアからも絶賛されている。というのもマッチャーがハウスワイフ2.0風潮を単純に礼賛するにとどまらず、持ち前の冷静な分析力とウィットで今後の課題点をもきちんと指摘したからだ。事実、本書では予想される論点に先回りして答えるかのように、巻末に「完全なハウスワイフ2.0になるための四カ条」が掲げられている。

1. 男性も家事育児などに巻き込む
2. 経済的自立を心掛ける
3. ほどほどに恵まれている層だと自覚する
4. 社会全体の利益を考える

 すなわち、会社を変えられず辞めたハウスワイフ2.0が、身近な男性を変えることで、家庭のなかからのボトムアップによる男女平等の一助となるのではないか。経済的自立は、女性運動陣営からの「後退現象なのではないか」「夫というインフラつきだから可能なのでは」という批判を乗り越える。恵まれた中産階級だからこそ、オーガニック食品にお金をかけられるのだという自覚をうながす。そして、「社会に無関心な、優雅なひきこもり」に終わらないよう呼びかけている。

 まだまだ発展途上にあり、それゆえ底知れぬポテンシャルを秘めているハウスワイフ2.0現象。いずれにせよ旧来の男性や会社中心型の働き方、生き方からの大胆なシフトが起きているのは間違いない。

※本書はアメリカではサイモン・アンド・シュスター社から『Homewardbound(家庭回帰)』のタイトルで出版されたが、企画段階では『Housewife2.0』のタイトルがついていた。今回、日本語版の出版にあたって著者のエミリー・マッチャーとも相談をし、よりストレートに本書の意図が伝わる元のタイトルに戻して刊行された。
※本原稿は『ハウスワイフ2.0』巻末の解説文を編集し、掲載しています。

ハウスワイフ2.0

著・エミリー・マッチャー、訳・森嶋マリ
本体1,600円+税 文藝春秋刊

» 立ち読み・購入はこちらから(文藝春秋BOOKSへリンク)

2014.03.06(木)
撮影=Jamin Asay