ドラマ「ホタルノヒカリ」で直面した芝居の難しさ
――インパクトの強いキャラや作品を続けて演じることで、加藤さんのイメージが固められていくことについては、どう思いましたか?
最初は戸惑いや葛藤がありましたね。テニミュにしてもライダーにしてもキャラクターの印象が強く、キャラのファンの方も多いので、加藤和樹としての活動に対して、「それはありえない……」と批判されたりもしましたから。だから、初めてライブをやったときも、加藤和樹を見に来ているのか、テニミュの跡部景吾を演じた人を見に来ているのか分からなくて、「自分を見てくれないのか」と思ったりもしました。決してイヤではないんですけど、テニミュやライダーファンのためにあれをやっちゃいけないみたいなルールを自ら作ってしまうし、その一方で「自分は自分だ」とか思い始めるんですよ。今はもう30歳近いし、応援してくださる方々も自分への見方を変えてくれているので、そういうことは気にしません。仕事は仕事、プライベートはプライベートと割り切っています。
――さて、加藤さんが俳優として自身の転機となった作品は何でしょうか?
芝居って難しいと思ったのは、「仮面ライダーカブト」の翌年に出演したドラマ「ホタルノヒカリ」ですね。それまで、マコトのように本当に普通の男のコの役をやったことがなかったこともあって、「“普通”に芝居してくれればいい」と言われても、よく分からない。自分でそれをやっているつもりでも、上手くできない。だから、とても打ちのめされたし、勉強になった現場でした。それから去年、白井晃さん演出の芝居「オセロ」に出たときは、久々に芝居で追い込まれて、稽古場に行きたくないと思ったほどでした。これまで役作りというと、文字通りどれだけ役を作れるか、だと思っていたんです。でも、白井さんの演出方法は、どれだけ役を自分に近づけるか、だったんです。自分をベースにすれば、より自然に演じられる。そして、自分の言葉で芝居できると……。本当に悩みました。演出家さんの言うことに応えることが、僕らの仕事。でも、たまにはこちらから意見も言いたい。ディスカッションも必要だと思いますね。
2014.03.07(金)
文=くれい響
撮影=山元茂樹
スタイリング=立山功