結構競争率は高かったのですが、3校目の試験をパスして転入できたときは、初めての映画とドラマの撮影が重なった時期で、ぎりぎり進級できるような出席状況でした。その学校は留年ができないシステムで、「規定欠席日数を超えて休んだら、退学ですよ」と入ったときに念を押されたほど、忙しかった。それでもなんとか通っていたのですが、高校3年のとき、映画の長期地方ロケで登校できなくなってしまい、気が付いたら学校に自分の籍がなかったんです……。出席日数についてきちんと把握できてなかったんですね、仕事に気をとられてた私の落ち度です。

通信制高校を選んだ決め手

 3校目では新しい友人たちとも良好な関係で学校生活も楽しかったので、無念な想いで図書室の片隅で退学届を泣く泣く書いたことを覚えています。職員室へ届を出しに行ったときに、「もしあなたが新しい学校に行きたいと思うんだったら、こういう手があるよ」って教えてくれたのが、通信制高校です。当時、通信制はすごく少なかったこともあり、初めてその存在を知りました。

 色々調べたら、最終的に通うことになる東京都立新宿山吹高等学校の通信制が、自分には一番合いそうな気がしたんですよね。理由は、まず、自宅から近くてアクセスが良い(笑)。アクセスって結構大事ですね。そして、それまでの高校生活で頑張って取得した単位を継続して生かせるというシステムがとても良いと思いました。単位数を計算したら、最短2年で卒業できるということが分かったんです。自分で授業を選び大学みたいにカリキュラムを作る、というのも斬新で面白いなと感じました。

 この小説にも出てきますが、1週間に1日、土曜日しか授業がない。月曜から金曜までは自主勉強。試験をふくめて登校日も日程が決まっていて、何日間は出なきゃいけないという決まりはあるんですけれども、それだけ出れば、あとは自分でレポートを出すというシステム。これだったら、仕事をしながら通うのが前提の私にも続けられるなと。

2024.06.13(木)
文=「文春文庫」編集部