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ファッション界のアイコン的存在が監修した「ザ・カール・ラガーエフェルド・マカオ」
そのホテル名を聞いて胸が高鳴る人は少なくないだろう。カール・ラガーフェルドは、ココ・シャネル亡き後、低迷したブランドを再び輝かせたファッション界のアイコン的存在だ。
ラガーフェルドがインテリアを監修し、自身もその構想に情熱を傾けたのが、2023年6月にオープンしたこのホテル。準備期間には10年以上を要し、2019年に亡くなったラガーフェルドにとって最大規模のプロジェクトにして、“最後の仕事”とも言われている。
建物は「グランド・リスボア・パレス・マカオ」と連結しているものの、一歩足を踏み入れると、雰囲気は一変。モノトーンを基調にしつつ、中国の伝統と西洋のアールデコ、現代アートが自然に溶け合う独創的な家具やインテリアが、別世界へと誘う。
全271室のホテルは、リネン類からバスローブ、オーダーメイドの家具、内装に至るまで、すべてラガーフェルドが手掛けたもの。そのインテリアは、大胆にして伝統的。職人技が光る中国の伝統的なあしらいを、ふとしたところに見つけるのも楽しい。
彼の美意識を通したシノワズリの美しさは、シャネルやカール・ラガーフェルドに詳しくなくても、思わず見惚れてしまうはずだ。
チェックイン時に目を奪われるのが、カウンターの背景を飾る1,000本以上の鍵で作られたカメオ・アートと、巨大な景徳鎮。これこそ、このホテルの世界観そのもの。
ロビーから続く「ザ・ブック・ラウンジ」は、パリにある彼のアトリエからインスピレーションを得ている。一面を飾る数千冊の書籍は、彼が愛した書棚にあったものを、並べ方まで再現したのだそう。
ここでティータイムを過ごせば、ラガーフェルドが愛したパリでの時間を追体験できるかもしれない。
2024.05.24(金)
文=芹澤和美
写真=Lina Shigemitsu