「私の年の女優に良い役は全然ないの」。そう断言して話題を呼んだのは、ハリウッドスターのキルスティン・ダンスト(42)。
子役から『スパイダーマン』や『マリー・アントワネット』でスターとなった彼女は、30代終盤にアカデミー助演女優賞候補となって以来、2年も俳優業を休んで子育てに専念していた。その理由は、40代となった彼女に似たような悲劇の母親役のオファーしか来なかったからだという。
MeToo運動により女性の権利についての意識改革が進んだとされるハリウッドだが、中年女優や働く母親のキャリア問題はいまだ根深い。
「映画の男性キャラクターには生涯が与えられるが、女性は賞味期限を課される」。こんな定番文句があるように、ハリウッドの役柄には男女間で年齢格差がある。
有名な話では、マギー・ジレンホール(46)は37歳のとき、55歳の男優の相手役として「年をとりすぎている」とされたという。『マトリックス』のキャリー=アン・モス(56)の場合、40歳の誕生日を迎えた翌日、オファーされる役が子なし女性から祖母に切り替わるという、「典型的にハリウッド的な」経験をしたと明かしている。
個々の俳優によって状況が異なることが前提となるが、こういったジェンダーギャップはある程度検証されている。少し古い調査になるが、2012年に発表されたクレムソン大学の経済学者らの分析によると、ハリウッドの歴代人気映画の主演は、20代だと5分の4を女優が占めた。しかし40代から男女比が逆転して8対2となり、以降の年代ではずっと男性優位がつづく。
これは想像しやすい現象だろう。1980年代から活躍するトム・クルーズ(61)やトム・ハンクス(67)は中年になってもさまざまな映画で主人公を演じているが、1990年代にセンセーションを起こしたジュリア・ロバーツ(56)やニコール・キッドマン(56)、アンジェリーナ・ジョリー(48)は、だんだん大画面の話題作で見ることが少なくなっていった。
もちろん、俳優のキャリアは人それぞれであるし、子育てに専念するために休業を選ぶ女優も珍しくない。ただ、キルスティンの言う通り、40代の女優には、役そのものが少ない。2023年の人気映画を対象にした最新調査によると、映画に登場する女性キャラクターは20代と30代、男性キャラは30代と40代が多い。女性キャラの割合は、30代で30%だが、40代となると13%にまで急落する。男性キャラの場合、50代に達するまで下り坂にならない。
2024.05.12(日)
文=辰巳JUNK