〈「あの才能をつぶすのか」告発されたクリエイターのファンが告発者を攻撃してしまう“奇妙なねじれ”はなぜ起きるか《漫画家・渡辺ペコさんインタビュー》〉から続く
40歳の主婦・茜はある日、中学時代の塾講師・今井が彫刻家になったことを知る。しかし彼が発表した上半身裸の少女の彫像が、同じ塾に通っていた親友・紫がモデルなことに気づいてしまう。26年前、14歳の紫と今井は「恋愛」をしていた――。
連載2周年を迎えた渡辺ペコさんの漫画『恋じゃねえから』は、「創作と加害」の問題をリアルに描き出して読者を毎月ザワつかせている。
読者の心を揺さぶるポイントの1つは、主人公が40歳で、14歳の時の後悔を取り戻そうとしているリアリティだ。著者の渡辺さんも「忘れられない後悔」があるという。そして渡辺さんがSNSをやめた理由も、そこからまっすぐ繋がっていた。
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「私は薄情なところがあるよなとずっと自分で感じていて」
――「中二病」なんていう言葉があるくらい、10代前半というのは後から振り返ると後悔だらけの時期という印象がありますが、『恋じゃねえから』の主人公の感情の揺れ方はとてもリアルです。あれは渡辺さんの体験から来る描写なのでしょうか。
渡辺ペコ(以下、渡辺) お友達が性被害にあっていたことはないんですが、その頃に自分がしたこと、自分ができなかったことがずっと胸の中に残っているのは私自身の体験です。私は薄情なところがあるよなとずっと自分で感じていて。
――薄情、というのはどういうことでしょう?
渡辺 小学生になったころからずっと仲良しだったお友達がいたんです。でも高学年になって私は別のグループと遊ぶようになっていって、仲良しだった子が朝迎えに来てくれるんだけど、先に出たりしてなんとなくずらすようになって、そのままフェイドアウトしてしまったことがずっと引っかかっているんですよ。
――喧嘩をした、というわけでもなく?
2024.05.12(日)
文=田幸和歌子