そして、今の立地を選んだ理由には極めて明快な2つのポイントがあった。まず、居抜きで安く借りることができたこと。そして、周辺には住宅街が広がっていて飲食店が少なかったことから需要があると考えたことである。
「かけそば」と「旬の天ぷら」が登場
そうこうしているうちに、「かけそば」に「旬の天ぷら」の「春ピーマン新玉ねぎのせ」が登場した。
「春ピーマン新玉ねぎのせ」はうつわにしたピーマンに新玉ねぎをのせて揚げたタイプ。なかなかユニークだ。たっぷりのつゆにそばが泳ぎ、その上に天ぷらをのせて食べていく。まず、つゆをひとくち。鰹節と昆布を使った上品で滋味深い味である。これはうまい。店主によれば「つゆの出汁のバランスがなかなか難しい」とのこと。いやいやかなり高得点だ。
そしてそばは近隣の製麺所の茹で麺である。やや太めでコシもある。大好きな麺である。そして「春ピーマン新玉ねぎのせ」は揚げ立てで新玉ねぎがあまくアツアツである。全体のバランスがよい一品である。
「肉そば」と「れんこん」も秀逸
友人の「肉そば」と「れんこん」もなかなかのビジュアルである。トロトロに煮込まれたねぎと厚い豚バラが抜群に合うとか。「肉そば」で初めからこの厚肉を使うとはセンスがよい。「れんこん」もアツアツでシャキっとした食感がナイスだとか。
追加の春菊天はつゆにのせるとジュワッと
あっという間に食べてしまったので、「冷しの春菊天そば」を追加注文した。するとまたすぐに「春菊天」を揚げ始めた。待つこと3分。「冷たいかけそば」と別皿の「春菊天」が登場した。「春菊天」は刻んでかき揚げ状にしたタイプ。それを「冷たいかけそば」にのせるとジュワッと油とつゆがはじける音が店内に響く。まさに揚げ立て天ぷらの美学である。冷たいそばもコシがあってなかなかよい。
オープンから店主の奮闘は続くのだが…
まだオープンして2ヵ月も経っていない店だがよい味を提供している。天ぷらは揚げ立てだし、つゆもうまい。お客さんはずいぶん訪れているのではと思い聞いてみると、店主は「それがかなり厳しい営業状況だ」と教えてくれた。
2024.05.08(水)
文=坂崎仁紀