明治天皇とともに御祭神として明治神宮にまつられている皇后、昭憲皇太后の崩御より110年。明治神宮ミュージアムではその記念行事として、修復・復元された「大礼服」をはじめとする昭憲皇太后のドレスなどを展示する「受け継がれし明治のドレス」展(前期展「昭憲皇太后の大礼服」は5月6日まで、後期展「明治天皇と華族会館」は5月25日~6月30日)を開催しています。
※前後期で展示品はすべて入れ替わります。
激動の明治期から現代へとよみがえったドレスをひと目見たいと、小説家の一色さゆりさんが明治神宮を訪れました。
悠久の森に囲まれた美しいミュージアムへ
JR原宿駅に隣接しながらも、街の喧騒を一切感じさせない荘厳で清らかな佇まいを見せる明治神宮。1920(大正9)年に創建された明治天皇と皇后である昭憲皇太后を御祭神とする神社で、境内には重要文化財がおさめられている宝物殿や明治神宮に関する展示を行う明治神宮ミュージアム、カフェやショップなどもあり、参拝後の人々が多く足を運んでいます。
2024年は昭憲皇太后百十年祭・霞会館創立百五十周年の式年にあたります。これを記念して明治神宮ミュージアムで開催されている「受け継がれし明治のドレス」展を訪れたのが、小説家の一色さゆりさん。明治神宮ミュージアムは、明治天皇・昭憲皇太后ゆかりの品々を保存・展示するため、2019(令和元)年に建てられた施設です。
ギャラリーや美術館にキュレーターとして勤務した経験を生かした作品が人気の一色さんですが、明治神宮ミュージアムを訪れるのは初めてだそう。
「悠久の緑に囲まれた、気持ちのスッとする場所ですね! 原宿駅から歩いてきて鳥居をくぐると一気に神聖な感じがして、明治神宮がパワースポットとして多くの人に愛されているのも肯けます。隈研吾さん設計のミュージアムも建物自体がとても清々しく、美しいです」
日本の近代化の象徴ともいえる大礼服が展示
「受け継がれし明治のドレス」展は前期・後期に分かれ、5月6日(月)までの前期では昭憲皇太后の御召物を中心とした展示となっています。特に注目を集めているのが、修復完了後、東京では初公開となる昭憲皇太后の大礼服です。大礼服とは、宮中で最も格が高く主に新年の拝賀式で着用された第一礼装。1888(明治21)年から1990(明治23)年にかけて製作されたと見られ、1909(明治42)年に尼門跡寺院の大聖寺(京都)に下賜されました。
長い年月を経て全体的に劣化が進んでいた大礼服ですが、中世日本研究所の所長モニカ・ベーテさんをはじめとする国内外の研究者や専門家が集結し、2018(平成30)年より大規模な修復プロジェクトを実施。2023(令和5)年に基本的な修復が完了し、今回の展示へと至ったのです。
2024.04.26(金)
文=張替裕子
写真=杉山秀樹