音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!
さて、2014年3月にリリースされる中から、彼らが太鼓判を押す楽曲は?
【2014年3月に流行る曲】
コトリンゴ「誰か私を」
コトリンゴはバークリー音楽大学出身の才媛
山口 ヒット曲とテレビタイアップというのは、切っても切れない関係ですよね。ジャニーズ・エンタテイメントのプロデューサー時代の伊藤さんにとって、テレビドラマはどんな存在でしたか?
伊藤 ジャニーズの場合はメンバーの誰かがドラマにキャスティングされるのが前提なのですが、ドラマタイアップといえば最上級のタイアップです。21世紀に入ってからのジャニーズの大ヒット曲といえば「世界に一つだけの花」と「青春アミーゴ」、両曲ともドラマのタイアップでしたしね。
山口 「青春アミーゴ」は伊藤涼プロデュースじゃないですか?
伊藤 Whoops!(笑)
山口 『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』(リットーミュージック)を共著した、新進気鋭のソーシャルメディアマーケッターの髙野修平さんが、「自分ゴト」「仲間ゴト」「世の中ゴト」という区分(「他人ゴト」「無知・無関心」を加えて5段階)を提唱しているのですが、1月からやっている日本テレビの「明日、ママがいない」は、久々に、「世の中ゴト」化したドラマだなと感じてます。
伊藤 なるほど。
山口 僕自身はドラマを観てないので、語る資格は無いのですが、監修が野島伸司さんで、相変わらず世の中を賑わす手法は健在だなと思いました。コトリンゴの「誰か私を」は、「明日、ママがいない」の主題歌ですね。
伊藤 なんと僕も観ていないので、内容に関しては社会派なんだろうなぁ、くらいなんですけど。「誰か私を」がこのドラマの主題歌になるというきっかけがなければ、コトリンゴというアーティストにも出逢えなかったと思う。彼女のプロフィールをみたらバークリー音楽大学の後輩なんですよ。もちろん逢ったことないけど、もしかしたら在学期間が被ってるかもしれないんで、あの頃のボストンの空気を知っているのかと思ったら急にシンパシー感じました。
山口 僕は、ニューヨーク大好きなんですが、ボストンは、まだ行ったことがないんです。9.11のテロが無ければ、その週にボストンまで足を伸ばして、フェンウェイパークでボストン・レッドソックスの野茂投手を観る予定だったんだけどね。行く前に移籍しちゃいました。
伊藤 そのフェンウェイパークの目の前に、僕は住んでたんですよ。ただ特に野球好きではないので、1回しか野球観戦しなかったけど、試合がある日は歓声が聞こえてきて「あぁ、今日もやってんなぁ~」みたいな。それもボストンの風景のひとつでしたねぇ。
山口 そんな“後輩”コトリンゴは、どんな印象ですか?
伊藤 声も雰囲気もメッチャ好み。
山口 坂本龍一さんのレーベルなので、チェックはしていましたが、大きくカテゴライズすると、矢野顕子さんに通じる女性アーティストですね。
伊藤 確かに。
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2014.02.25(火)