脳の認知機能と筋肉の関係性

渡辺 先生、私最近よくむせるんですけど、それも筋トレで改善できますか?

谷本 嚥下(えんげ)するときに使う筋肉が弱っている、ということだと思うんです。普段から硬いものをしっかり食べて、大きいものをちゃんと飲み込むのがまず大事。そして、舌骨上筋、舌骨下筋という、のどの前の筋肉があって、これは食べものを送り込むときに使う筋肉、同時に顔を前に倒す働きのある筋肉でもあるので、顔を前に倒す筋トレで鍛えることもできるんです。

渡辺 顔を前に倒す?

谷本 背すじを伸ばして姿勢を正し、おでこを手で押す。手の抵抗に対して首を前に曲げ、手の抵抗に耐えながら顔を上げて戻す。嚥下能力が落ちた人はこういうトレーニングをします。

野宮 あと、年を取って気になるのが脳なんです。脳の認知機能と、筋肉の関係性ってありますか?

 

谷本 あります。脳をよく使うことが大事というのはもちろん、運動と強い関係性があるというエビデンスはわりと明確にあるんです。ですから、筋トレに限らず、運動全般が脳機能にいい。運動をすることで、脳の血流が1~2割上がったりしますし、筋肉から出てくるマイオカインというホルモンがあるんですが、それが神経栄養因子を増やし脳機能を高める、ということもいわれています。実際に脳のボリュームがちょっと増えたりもするんです。

 例えば、短期記憶を司る海馬って、すごく萎縮するんですよ、加齢で。でも運動をするとちょっと大きくなったりするんですよね。

松本 希望だ(笑)。

谷本 なので筋トレに限らず運動全般は脳機能にいい。認知症予防にも運動しましょうというのはよく言われる話なんです。あと、筋トレは乳酸を簡単に出せるんです。走っても出ますが、筋トレは全身の汗をかかずとも簡単に乳酸濃度を上げられるし、そうすると頭が冴えるっていうこともある。脳は乳酸を使うんですよ、エネルギー源として。

女史会 へえ~!

2024.04.03(水)
文=辛島いづみ