名物をしみじみ味わって、のんびりと街歩きしたい台湾は、少し見ぬ間に懐かしさはそのままに、ヘルシーに進化していました。「CREA」2024年春号の「行かなくちゃ、台湾」特集。その一部を抜粋し、掲載します。
CREA 2024年春号
行かなくちゃ、台湾
特別定価980円
若い世代にフェムテックが浸透している台湾。現地で結婚、出産、子育てを経験している近藤弥生子さんにその背景を教えてもらいました。
「出産を機に身体を整える」中医学の概念で充実した産後ケア
台湾には「月子(ユエズ)」と呼ばれ、母親が産後1カ月の期間をしっかり静養するという産後ケア文化があります。最近増えつつある日本の産後ケアと違うのは、中医学の考え方が軸となっている点。
「台湾では一般的に、女性が体質を整えるチャンスは初潮を迎える青春期、妊娠出産期、更年期の三つが鍵とされています。この期間に中医学の考えを実践することで、身体をより良い状態に立て直すことができると考えられています。なかでも産後の「坐月子(ズォユエズ、産後ケアを実践すること)は最も重視されています」と教えてくれたのは、台湾で日本語対応の産後ケアセンター「小青田大寶產後護理之家」を経営する扈仕達氏。
台湾には政府が認可する産後ケアセンター(產後護理之家)が2019年時点で275件存在し、看護師が24時間体制で赤ちゃんのお世話をしてくれます。母親はホテルのように快適な個室で、一日3食の産後ケア専用食と2食の薬膳スイーツを食べ、薬膳茶を飲み、提供されるパジャマを着用してひたすらベッドで休みます。赤ちゃんの授乳が必要になると内線電話が鳴り、母親が授乳するとなれば部屋まで赤ちゃんを連れてきてくれるというシステム。
期間中、センターの外に出ることはほぼありません。センターが提携している小児科や産婦人科医が定期的に診察に来てくれるので、赤ちゃんや母親の身体の状況を細かく相談できるのも安心です。施設によっては出張ヨガやマッサージ、シャンプーなどの美容サービスも。
昔は台湾の各家庭で行われていた産後ケアですが、現代では一大産業へと発達しており、産後ケアセンターのほか、産後ケア専門の知識と技術を備えたシッターの自宅派遣サービス、身体を整えるための産後ケア食デリバリーなどが存在します。「産後ケアをしっかり行えば、更年期が楽になる」と信じられている台湾では、産後の女性の静養は不可欠であるという社会通念があるのです。
【松江南京】
小青田大寶產後護理之家(シャオチンティエンダーバオツァンホウフーリーヂージァ)
所在地 台北市中山區建國北路一段80號7樓
電話番号 02-7702-1155
https://www.ifruitu.com.tw/
●教えてくれたのは……
近藤弥生子(こんどう・やえこ)さん
編集・ライター
2011年2月より台湾在住。オードリー・タンからカルチャーまで、生活者目線をモットーに取材。日本語著書に『オードリー・タンの思考』(ブックマン社)など。
※表紙と巻頭グラビアに登場した「&TEAM」NICHOLASのスペシャルインタビュー、台湾で必ず食べたい豆花や魯肉飯の名店、メイドイン台湾の美しい日用品などが盛りだくさんの「行かなくちゃ、台湾」特集は「CREA」2024年春号でお読みいただけます。
2024.03.14(木)
文=近藤弥生子