カミさんは野菜担当で、いつも3〜4種類はおかずを作ってくれる。例えば、畑から採ってきたばかりのじゃがいもを見て、「オリーブオイルとお塩がいいわね」と言って、ささっと料理してしまう。食べるまで、俺は内心「これはちょっと焼いて、チーズをのっけても美味いだろうな」「じゃがバターもいいんじゃない」なんて考えたりもするけれど、やっぱりカミさんが作ってくれたのが一番。仕事が早く終わって急に帰った時も、「何もないわよ」と言いつつ作り置きがある。感謝していますよ。

 

タバコのために健康でいたい

 食べたいものを自分たちで作るようになると、外食しても「家で食べればよかった」と思うことが増えてきました。

 塩・味噌・醤油・油といった調味料も自分たちでこだわって見つけたものを使っているから、外であまり感動しなくなっちゃうんです。お寿司屋さんに行っても、家で使っている醤油のほうがいい醤油だったりする。外食は2カ月に1回くらいしかしませんが、結局は「うちで食べりゃよかったな」と言いながら帰ってくることが多いですね。

 でも、外食もしないと、それはそれで楽しみがなくなってしまう。だから俺は「そば打ちだけは絶対にしない」と決めているんです(笑)。だって、そばも打てるようになったら、ますますどこにも食べに行かなくなってしまう。俺の場合、地方に行って外食しようかというときは、大体、そば屋なんです。その楽しみだけはとっておこうと、心に決めています。

 これだけ料理にこだわるようになったのは、やっぱり還暦を過ぎたあたりから。とにかく病院の世話になりたくないから、免疫力を日頃からつけておこうと思ってね。食べるものから気をつかうようになりました。だって、病院って禁煙じゃないですか。もし体を壊して入院になったら、タバコを吸えない。愛煙家の俺は、絶対に入院だけはしないぞと、厳しく自分に誓っているんですよ。タバコを吸うために、健康でいるんです。

2024.03.05(火)
出典元=文藝春秋「2024年1月号」