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6軒の農家が守り継ぐ国東半島の七島藺

 七島藺(しちとうい)と呼ばれる植物をご存じですか? 琉球畳の材料となるカヤツリグサ科の植物で、現在、この七島藺が国内で栽培されているのは大分県北東部にある国東半島のみ。しかも生産農家はたった6軒で、そのうち畳まで作っているのは5軒だけになります。

 2013年5月には構成する要素に七島藺を含む、大分県国東半島宇佐地域の農林水産業システムが国連食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産の認定を受けています。

 さらに2016年12月には、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価などの特性を備えた産品の名称を、地域の知的財産として保護する地理的表示保護制度(GI)に「くにさき七島藺表」として登録されました。

畳表に使われなかった部分で工芸品を制作

 そんな希少で価値の高い植物である七島藺の中で、畳表として使われなかった部分を利用して円座やラグ、アクセサリーやバッグなどの工芸品を制作しているのが「七島藺工房 ななつむぎ」を主宰する七島藺作家、岩切千佳さんです。

 ちなみに岩切さんは、2023年から七島藺の栽培も始めています。

強度と艶やかな質感が七島藺の魅力

 七島藺の特徴は表面の皮が固くてツルツルしていること。同じく畳に使われるい草よりも強度があるため、1964年に開催された東京オリンピックの柔道では七島藺で作られた畳が使用されています。

 また、使うほどに艶が出て青々とした緑色からあめ色に変化。味わい深い雰囲気になってくることも特徴です。

2024.03.02(土)
文・撮影=石川博也