幸せに働けない会社の人が辞めることは、ある意味で日本のため
──会議に対する日米の違いも印象的でした。アメリカでは「会議の場」だけで完結することが、日本では「事前準備」「終わったあとの議事録作成」「課題検討」など、多くの時間と労力を要します。こうした作業一つひとつも「減らす」ほうが効率的だと書かれていました。
日本では定例会議などが、何ができていてどれが遅れているという報告と確認の場になっていますが、「会議の時間内だけで完結」できたほうが、どう考えても生産的じゃないですか。だからマイクロソフトでは、マネージャーが「この会議はあまり重要じゃないからやめよう」とスコープから外すなど、みんなが絶対的に重要なタスクにフォーカスできるように気を配ってくれることも多くあります。
結局、仕事は「どれだけやったか」ではなく「どれだけ会社にインパクトを与える仕事ができたか」が重要なので、最初はチーム内など小さなところからでも共通認識をつくり、自分たちの仕事のなかで「何をやらないか」を決めていくといいと思います。
──いま牛尾さんは、残業や仕事の持ち帰りもされていないそうですね。
長時間労働はかえって効率が悪いですからね。実際、デスクワークにおいて生産性を阻む大きな要因は、身体以上に「脳の疲れ」だというデータもあります。
でも、僕がリアルにそう思うようになったのは、アメリカに来て2年経った頃、精神的・体力的に限界を感じていた時期があったからです。世界一のドリームメンバーのなかで実力不足の自分が仕事をし続けるには、とにかく頑張るしかなく、「職場は修行の場」だと思って猛烈に働いていたため、疲弊してしまったのです。
そのとき、メンターのクリスに「生産性を上げるには学習だ」と言われました。ずっと仕事をしていると疲れるし、生産性を上げるためには新しいことを学んだり脳を休ませたりすることも必要だ、と言われたのです。
そこで、朝型の生活にシフトチェンジしました。朝起きてから就業までの時間を新しいことを学ぶ「学習」の時間に充て、17時には強制的に仕事を終えてランニングや趣味の時間に充てる生活に変えました。これにより、頭も身体もリフレッシュできるようになり、さらに「学習」によって仕事の効率も高まって、毎日の充実度も上がりました。
結局、生産性を上げるために必要なのは、「頑張り」ではなく、脳の負担を減らして整理することだったんです。これをチーム内で意識共有し、会社全体のカルチャーにできると、その会社はすごく働きやすい会社になると思います。
──上司や同僚、先輩の意識共有が得られない場合はどうすればよいでしょうか。
僕だったらそんな会社は辞めちゃうかもしれません。何より自分の幸せが大事なので、居心地のよくない思いをしてまでその会社に居続ける必要はないと思います。
それに何より、幸せに働けない会社の人がどんどん辞めることは、ある意味で日本のためにもなると僕は考えます。世界にはもっと幸せを感じながら働ける場所がたくさんあります。幸せに働ける会社にどんどん人が集まれば、日本全体がもっとよくなる可能性が高まります。
仕事は、自分の人生をエンジョイするための手段です。ストレスのない楽しい働き方が日本でも広まることを願っています。
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2024.01.24(水)
文=相澤洋美
撮影=三宅史郎