この記事の連載
パリの美味しいミュージアム #1
パリの美味しいミュージアム #2
パリの美味しいミュージアム #3
パリの美味しいミュージアム #4
パリの美味しいミュージアム #5
このところパリでは新しいアートスポットや、これまでの施設をバージョンアップしたものが続々と登場している。魅力的なのは、そこにもれなく美味しい店が入っていること。
観る楽しみと味わう幸福。その両方を叶えてくれる、とっておきの場所を5回に渡りご紹介しよう。
暮らしの楽しみを追求した 多能のアーティスト
◆Maison de Victor Hugo(ヴィクトル・ユゴー記念館)
Café Mulot(カフェ・ミュロ)

パリでも最も美しい広場のひとつであるヴォージュ広場の一角に『レ・ミゼラブル』などの作者として世界的に有名な文豪ヴィクトル・ユゴーの記念館がある。

30~40代にかけて彼が10数年間を暮らしたこの建物は、生誕100年を機に記念館とする計画が進み、1903年に開館。以来、大切に受け継がれてきた。

作家であり、ロマン主義のムーブメントの主役にして政治家。女性解放や貧困などの社会問題解決に尽力した人道主義者としても知られ、フランス紙幣の顔になったほどであるから、83年の生涯は国葬という形で顕彰され、偉人たちが眠るパンテオンに祀られている。

記念館はこの歴史上のビックネームのセンス抜群で、人間味溢れる一面に触れられる貴重な場所だ。
広場に面した部屋には、彼の50年来の愛人宅の内装が移築され、再構築されている。しかもそれはユゴー自身がデザインしたものだというのだから驚く。

また、まるでジブリ映画の幻想的なシーンを思わせるデッサンやオリジナルの家具など、彼の多彩な才能が静かな館に満ちている。

どことなく親密な雰囲気がある記念館の心地よさは、カフェまで続いている。サンジェルマン・デ・プレで長く愛されてきたパティスリー「ミュロ」のカフェが、記念館の地上階に登場。

ヴォージュ広場からその存在は分からず、館の木の扉を入って奥へ行くと洒落たコーナーが現れる。

マロニエの中庭がテラス席になる季節も最高。まさに知る人ぞ知る、とっておきの隠れ家カフェなのだ。

Maison de Victor Hugo(ヴィクトル・ユゴー記念館)
所在地 6 place des Vosges 75004 Paris
電話番号 01 42 72 10 16
開館時間 10:00~18:00
休館日 月曜
入館料 無料(特別展は有料)
Café Mulot(カフェ・ミュロ)
電話番号 01 82 83 03 80
営業時間 10:00~17:45
定休日 月曜

Column
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2024.01.17(水)
文=鈴木春恵
撮影=橋本 篤
編集=矢野詔次郎
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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。