――年月が進むにつれて、長谷川家に深みが出てきそうですね。さて、ご自分が主演された「本所・桜屋敷」をご覧になって、どんな感想を持たれましたか。

幸四郎 現場にいた思い、そして鬼平への思いがあるなかで見まして――感動しました。すごく良い時代劇です(笑)。良い作品にしていただいた、その作品に自分が出演することが出来たという喜びもありました。最後の最後も……良いですよね(笑)。

――作品になって、改めて発見のようなものはありましたか。

幸四郎 火野さんの彦十と初めて出会う場面で、平蔵が彦十の頭を叩くんです。台本にはそうした指定はありませんし、監督にも伝えずにいきなりやったので、ある意味、私にとっては冒険でした。そのシーンを撮り終えたあと、火野さんに「余計なことをしてすみませんでした」と頭を下げたんですが、「大丈夫、これが売りだから」と火野さんが言ってくださったことを思い出しました。

――染五郎さんはいかがでしたか。

染五郎 一視聴者として本当に面白かったです。池波先生の作品の特徴は人物描写のきめ細かさにあって、吉右衛門のおじさまのシリーズで映像化された時も、キャラクター一人ひとりが粒だっているのが魅力だったと思います。今回も個性の違いが際立っていました。それと照明が素晴らしいです。

――それは現場で感じられたんですか。

染五郎 個人的に舞台でも映像でも照明を見るのがすごく好きで、この角度から光を合わせるとこう映るのかということに興味があります。「あのシーンはこういう風に映っているんだな」といった発見がありました。今回の「鬼平犯科帳」は照明が素晴らしくて、見ているだけなのに、映像空間と同じ空間にいるような気持ちになれましたね。

――今後、来年5月には劇場版「鬼平犯科帳 血闘」が公開予定で、5月以降にも「鬼平犯科帳 でくの十蔵」、「鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛」の2作品が時代劇専門チャンネルで放送、さらにLeminoでも配信される予定です。鬼平のファンとしては息の長いシリーズになることを望むばかりですが、幸四郎さんとしては将来に向けてどんなイメージを持っていますか。

2023.12.29(金)
取材・構成=生島 淳