ryuchellさんとの婚姻関係を解消し、「新しい家族のかたち」を築いていくことを2022年8月に発表したpecoさん。2023年7月のryuchellさんの死去を乗り越え、5歳の息子と少しずつ前を向いて歩んでいると話します。

 小説『ぼくは青くて透明で』(1月16日発売)で男の子同士の恋愛を描いた窪美澄さんと、“普通の家族”について語りました。『週刊文春WOMAN2024創刊5周年記念号』から一部を抜粋して紹介します。

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「男」として生きていくことの苦しさを話してくれたryuchell

――pecoさんは、同性が好きだったというryuchellさんのカミングアウトを受け、お二人で家族のかたちを模索した4ヶ月間のことを2月1日発売のエッセイ『My Life』で明かされています。「新しい家族」を作る上でハードルになったものは何でしたか。

peco 窪さんの小説の中にも書かれていたことですが、育った環境によって、何を“普通の家族”と考えるかは皆違うと思うんです。だからこそ、お互いの“普通”を変えることも難しいですよね。私はエッセイの中で、子どもは両親が揃った環境で育てたい、と書きましたが、それは女性のお母さんと男性のお父さんという意味ではなくて、我が家の場合でいえば、息子の大好きなryuchellと自分がいることが、子どもにとって一番だと思っていて。

 正直、ryuchellがどんな見た目になろうと、男の人が好きであろうと、私にとってそこは問題ではなかったんです。だから、私たちが恋愛関係を解消したとしても、そこでわざわざ離婚を選択して息子を悲しませる必要はないのでは、と考えていました。一方でryuchellは、「戸籍に“夫”という文字がある限り、自分は男として生きていかなければいけない。その事実が苦しい」と話してくれたんです。

 すごく濃密なコミュニケーションを取られていたんですね。話し合わないままダメになっていくカップルが山ほどいる中で、言葉を尽くしてこの後の三人の人生をどうするかを話し合われたということ、すごく前向きだなと思いました。

2024.01.13(土)
Text=Natsumi Koizumi
​Photographs=Wataru Sato