人って一色では染まらないし、流動的に動いていくもの

 嬉しいです。自分が一番抵抗を感じるのが、“正しい家族観”みたいなものなんです。大黒柱のお父さんと専業主婦のお母さんがいて、子どもは二人、みたいな家族が普通ですよと言われると、「いやいや、そういう家だけじゃないし!」と反発心がむくむくと生まれてくる。世間が考える”普通”にはまらない家族やカップルをきちんと書かないと、なかったことにされてしまうのではないかという思いがずっとあって。それで、小説にいろんな家族や恋愛を描きたいと思ってきました。

 そんな中でryuchellさんの変化に触れて、人って一色では染まらないし、流動的に動いていくものなんだと身にしみてわかった気がして。今は同性同士で愛し合っている海と忍だって、今後は異性の人を好きになるかもしれませんし。

はじめてryuchellに会った時に片思いを覚悟した

peco ryuchellが「今まで男の人が好きだった」と言ってくれたとき、もちろん驚きはしましたが否定的な気持ちは本当になくて。むしろ、はじめて会った時に「この人は男の人が好きなのかも」と思って片思いを覚悟したことを思い出して、「あの時の私の勘、あってたやん」と思ったくらい(笑)。

 そうだったんですね。この小説も、小さな恋の物語を書きたかったというのがあって、男同士という部分で新展開を求めたわけではなかったんです。家族の話と同じように、世の中にはいろいろな愛のかたちがあるし、あるいは恋愛そのものに興味がない人もいて。でも、それを書いても恋愛小説だと思ったんですね。そういった意味で、お二人の発表に触れた時も、驚くということもなく、すごく自然な流れだったのかなと思って拝見していました。

※「男らしさ」や「多様性」といった言葉にお二人が思うこと、pecoさんと同年代だという窪さんと息子さんとの会話、小説『ぼくは青くて透明で』のなかでpecoさんが素敵だと思った登場人物など、対談の全文は「週刊文春WOMAN2024創刊5周年記念号」でお読みいただけます。

ぺこ/1995年大阪府生まれ。カリスマ読者モデルとして人気を集め、SNSの総フォロワー数は340万人以上。現在は5歳になる息子の育児の様子をSNSで発信している。

くぼみすみ/1965年東京都生まれ。作家。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18 文学賞大賞受賞。2022年『夜に星を放つ』(文藝春秋)で第167回直木賞受賞。

text: Natsumi Koizumi
​photographs: Wataru Sato 

ぼくは青くて透明で

定価 1,760円(税込)
文藝春秋
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2024.01.13(土)
Text=Natsumi Koizumi
​Photographs=Wataru Sato