この記事の連載

現代の問題は、女性が働くか否かではない

 女性が子どもと家にいることが期待されているヨーロッパの国々、つまりスペイン、ポルトガル、イタリアなど家族やジェンダーの規範が厳格な国では、女性ひとりが産む子どもの数が少なく、平均で1.3人から1.4人だ。フランスや北欧など、出生率と女性の労働参加率が高く、女性が平均して約1.8人の子どもを産む国では、寛大な産休制度、産前産後のサポート、無料の託児所があり、授乳中の母親の勤務日数が短い傾向がある。

 人口学者のローラン・トゥールモンはフランスについて、次のように述べている。近年、国をあげてナニー制度と産後の看護師訪問にリソースを注ぎ込み、質が高く低コストの保育があり、両方の親が最大3年の育児休暇を取ることができるなど、「より柔軟なパッケージになっている」。このような政策のない国、つまり私たちの国のような国々では、女性は仕事か母親かという選択をもっと厳しいものだととらえている。ベルリンの人口開発研究所の研究者シュテファン・クローナートは、シンプルにこう述べている。「現代の問題は、女性が働くか否かではない。問題は、女性たちが将来子どもを産むかどうかだ」。

それでも母親になるべきですか

定価 2,200円(税込)
新潮社
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

ペギー・オドネル・ヘフィントン(Heffington,Peggy O'Donnell)

作家。カリフォルニア大学バークレー校で歴史学博士号を取得。米陸軍士官学校に博士研究員として勤務後、シカゴ大学へ。ジェンダーや母性、人権等の歴史を教えるほか、エッセイや論文を多数発表。『それでも母親になるべきですか』が初の著書。グミキャンディについても多くの意見を持ち、夫のボブ、2匹のパグ、エリーとジェイクとともにシカゴに在住。

← この連載をはじめから読む

2023.12.12(火)
著=ペギー・オドネル・ヘフィントン
訳=鹿田昌美