最後に、水木しげるが1985年版の『ゴジラ1985』に寄せた文章(「ゴジラと私」)を参照しよう。水木は、オリジナルの『ゴジラ』を観たとき、ゴジラが東京を破壊するのを見て「ひどく喜んだ」という。「「ゴジラ」が、貧乏人を救ってくれると、勘違いしたのだ。/とにかく、ぼくよりも幸福な人々が「ゴジラ」にいじめられるのが面白かった」と。
ここに表れているのは、ゴジラの見方というよりは、戦後日本への周縁からの眼差しである。『ゴジラ-1.0』がその存在を否認した眼差しだ。
【参照文献】
水木しげる「ビンタ 私の戦争体験」『文藝春秋』(2000年2月号)
水木しげる「ゴジラと私」『THE MAKING OF GODZILLA 1985』(小学館、1985年1月15日)
いずれも『水木しげる漫画大全集 103 水木しげる人生絵巻/わたしの日々他』(講談社、2018年)所収
2023.12.10(日)
文=河野真太郎