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 さまざまな樹木を鉢に移し、豊かな自然風景を表現する「盆栽」。日本の伝統的な園芸技法であり、最近は海外でも「BONSAI」の名称で知られています。

 “盆栽ブラザーズ”こと大端将さん、鈴木林太郎さんは、そんな盆栽の魅力を広めるべく浜松で盆栽&ギャラリー「頭山(あたまやま)」を運営。多彩な器と樹木を組み合わせた盆栽の展示・販売や、初心者も楽しめるワークショップなどを開催しています。


盆栽に対するイメージを変えて、かっこいいものにしたい

――「盆栽ブラザーズ」として活動を始めたきっかけはなんだったのでしょう?

 大端将さん(以下敬称略):僕は2020年から浜松で、まちづくりの⼀環で空き家の再⽣をしておりまして。拠点としている「みかわやコトバコ」の向かいの空き家で植物を扱うお店ができないかと考えたのが始まりでした。

 ちょうど同じタイミングで、浜松市内でうつわのお店「Rohan(ロハン)」を運営している林太郎さんと知り合って、作家さんが手がけた鉢がより映える植物は……と考えた時にたどり着いたのが、数百年の伝統がある盆栽です。

――ちなみに、それまで盆栽を育てた経験は?

大端 僕も林太郎さんもゼロです。なので、⽇本盆栽協会の中遠⽀部に所属している趣味家さんたちに相談をして、一から教わりました。

鈴木林太郎さん(以下敬称略) 僕たちには70、80代のベテランの師匠がいるんですよ。僕たちも盆栽を始めてまだ数年と日が浅いので、今もよく相談に乗ってもらっています。「頭山」に師匠を呼んで、初心者向けのワークショップを開催することもあります。

――「頭山」という店名は落語の演目『あたま山』から付けたとのこと。『あたま山』はある男性がさくらんぼの種を飲み込んだら、頭に木が生えてきて花見の名所として知られるようになり……とシュールな噺ですが、なぜこの名前に決められたんでしょう?

鈴木 僕が落語好きということもあるんですが、頭の上に木が生えるイメージが盆栽にぴったりだなと思いました。

大端 でも、ちょっと読みにくいみたいで「ずさん」と読まれることも多いですね(笑)。

鈴木 そうそう(笑)。それともうひとつ、大喜利の中にはよく「○○とかけまして、△△ととく」と謎かけが登場しますよね。「盆栽とかけて、○○ととく」というように、新しいアイデアをかけ合わせて、これまでにない、カジュアルに楽しめる盆栽を提案できたらいいなと思いました。

――楽しそう! “伝統文化”と聞くと、若い世代が新規参入しづらいとか、新しいことを始めにくいイメージがありますが、そんなことはなかったですか?

大端 盆栽というと、「難しそう」とか「古くさい」イメージを抱きがちですよね。だからこそ、僕たちはそんな盆栽に対するイメージを変えて、かっこいいものにしたいと考えたんです。職人さんたちは、むしろそんな僕らの想いをおおらかに受け入れてくれました。

 そもそも盆栽は一般の植木屋や生花展で売られることは少なく、大型のものも多いため、郊外にある専門店や盆栽園で売られていることがほとんどです。わざわざ出向かなければ、日常的に出合う機会もなかなかありません。これまで地元で盆栽を作ってきた職人さんたちの中にも、このままでは盆栽の文化が廃れてしまう、なんとかしたいという思いがありました。

鈴木 実際、少子化の影響などもあって若い世代で盆栽に親しむ人は減っていて、僕たちの元には、ご高齢の方から大切に育てた盆栽を引き取ってほしいというご相談も寄せられています。「頭山」が盆栽にふれるきっかけのひとつになってくれたら嬉しいですね。

2025.07.24(木)
文=河西みのり