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難しく考えずに樹木と鉢のコーディネートを楽しんでほしい

――「頭山」では現在、どれくらいの数の盆栽を扱っているのでしょう?

大端 どれくらいだろう……。現状取り扱っているのが100くらいで、過去に販売してきたものも⼊れると、200〜300になるかと思います。販売だけでなく、店内装飾などレンタルも行っています。

鈴木 樹木の種類としては一般的なものからちょっとマニアックなものまで20種類、鉢は8人の作家さんが作ったものを扱っています。

――お客様はどんな方が多いですか?

大端 幅広い世代の方がいらっしゃいますが、いちばん多いのは20〜40代の女性です。これまで盆栽を育てたことがない方もたくさんいらっしゃいます。

鈴木 中学生の方が買いに来てくれたこともありました。

――素敵ですね。中学生のお小遣いでも買えるお値段のものもあるのでしょうか?

大端 苗1本から販売しているので、なかには1,000円前後で購入できるものもあります。ただ、鉢とセットの場合は、(作家ものということもあり)ややお値段は張るかもしれません。

――やはり樹木と鉢の組み合わせ「鉢合わせ」が「頭山」の盆栽の醍醐味だと思うのですが、樹木と鉢、どちらを軸に置いて組み合わせを考えれば良いのでしょう?

大端 「樹木メインで」などテーマを決めて依頼されることもありますが、「この樹木を育てたいから合う鉢は……」と選んでもいいし、その逆もありです。

 一般的に盆栽は平たい鉢に植えられることが多いのですが、「頭山」では丸みを帯びたものや、高さがあるものなど、さまざまな鉢を扱っています。難しく考えずに、自由にコーディネートを楽しんでほしいなと思いますね。

鈴木 僕たちが新しく盆栽を手がけるときに意識しているのは、なんとなく樹木と鉢の雰囲気を合わせることでしょうか。盆栽のコンセプトは、「鉢の上で古木感・大木感・自然感のある樹を作る」こと。そのため、“大木感”を表現するために、自ずと鉢の大きさは樹木よりも小さくなります。

――茶道のように、鉢の中に自然の風景を表現しているんですね。

大端 そうですね。ちょっと高度な技術ですが、あえて枯れて白骨化した枝「神(ジン)」や幹「舎利(しゃり)」を作ることで、より古木らしく仕上げる方法もあります。

鈴木 まずは樹木も、鉢も自分が“好き”と思うものを選んでいただくのがいちばんだと思います!

―― 盆栽=お手入れが難しそうというイメージもあります。盆栽を育てる上で大切なこと、最低限必要なことはありますか?

大端 植物ですから、何よりも大事なのは毎日の水やりです。盆栽を枯らせてしまう理由のほとんどは水不足が原因です。特に夏は水切れがしやすいため、樹木によっては1日3回くらい水やりをした方がいいものもあります。また、表面が苔で覆われている場合は、苔だけが水分を吸収し、樹木に行き渡っていないこともあるので注意が必要です。

 もう一つは、日当たり、風通しがいい環境で育てること。観葉植物のように盆栽も室内で育てると誤解されがちですが、屋外で太陽を浴びせ、鑑賞する際に室内に入れるのが基本です。

鈴木 基本的な育て方としては一般的な植木と同じように、毎日決まった時間に水をあげる感覚でOKです。ベランダでも育てられますよ。

―― 盆栽の形を整えながら育てるためには、剪定が欠かせないと思うのですが、初心者にはハードルが高そうです。

大端 「頭山」では購入する際はもちろん、購入後もLINEで個別に相談に乗っています。剪定のタイミングをはじめ、「最近、元気がない気がする」とか「旅行中のお手入れはどうしたらいい?」など、不安なことがあったら気軽に相談してください。

鈴木 がんばってひとりで育てようと思わず、盆栽のある暮らしを楽しんでほしいです。

盆栽ブラザーズ

大端将さんと鈴木林太郎さんによる、盆栽の普及を目的としたユニット。2022年結成。静岡県浜松市にある盆栽&ギャラリー「頭山(あたまやま)」をプロデュースしている。

頭山

Instagram:@atamayama.bonsai

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2025.07.24(木)
文=河西みのり