「東京の空」に込めた思い

 本来はノンタイアップで作った曲は5曲ある。

 冒頭の曲は、1970年代のフォークシーンを思い出させるスリー・フィンガー奏法のギターで始まる「君のこと」。小田自身がギターを弾いている。そして「君」とは、若き日の友人たち、仲間たちのことだろう。

 若い時に「幻想」なるタイトルの歌も作ったこともある同級生たち。そんな友人たちに、小田は「歌い続けてゆくからきっと 元気でいて 君がいないと つまんないから」と歌っている。若いころ好きだった音楽を改めて見直したような歌もある。ちょうどこのころ、小田は1970年代によく聴いていたキャロル・キングの来日公演に行っている。5番目の「誰れも どんなことも」はその影響が感じられる楽曲といわれる。

 そしてアルバム「どーも」の最後を飾るのが「東京の空」だ。

 2006年の「クリスマスの約束」用に作った曲である。2008年の全国ツアー時には、「ご当地紀行」の際に撮った各地の空の映像がモニターに流れるなか、小田のピアノのみで歌われ、人々の胸を打った。慰められているような、励まされているような、そんな歌である。

 小田に、この歌について訊ねた時の問答は、こんな感じだった。

 

「『さよならは 言わない』とか『東京の空』は、よく書いたなと思うんだよね。相当、根性が入ったものがないと書けなかった。この曲はこうじゃなければダメだという、代用のない材料で書いたんだ」

 それは、若いころからの経験に基づいた小田さんの想い、信念みたいなものですか?

「うん、そうだな。なんか、救いが、どこかに救いがあるはずだという想いかな。頑張っても、頑張っても、うまくいかないようだけど、でも結局、自分が頑張ることによって、道が見つかってきたということではないかな。俺の曲のテーマのひとつだよね、きっと」

筑紫哲也からの手紙

 小田にとって、「東京の空」の歌詞が、小田自身の実感なのだと感じた逸話がある。それは2007年の「クリスマスの約束」を見たと、ジャーナリストの筑紫哲也から手紙をもらった時のことである。

2023.11.26(日)
著者=追分日出子