アカデミー賞女優ハル・ベリーは「そんな金払いたくないから、みんなと同じ無印になるわ」と言って、ブルーのマークが消えた。ところが、ベストセラー作家スティーヴン・キングは「僕も8ドル払ってないけど、なぜかブルーになってる」とツイートした。

 また、ヘリコプター墜落で亡くなった元NBA選手コービー・ブライアントの使われてないツイッターアカウントもブルーになった。誰を無料で認証し、誰をしないのか、その基準はデタラメだった。

 いちばんの問題は、8ドル払えば誰でもブルーになれることで、当然、「なりすまし」が横行した。大手製薬会社イーライリリーのなりすましアカウントが「インシュリンを無料で提供します」と嘘ツイートをして、イーライリリーに問い合わせが殺到。ブルーの本人認証としての信頼性はゼロになった。

 

次期CEOに指名されたのは…

 イーロンのツイッターはとにかく仕事が素人。アメリカのNPR(アメリカ公共ラジオ)やPBS(公共テレビ放送)、イギリスのBBCのツイッターアカウントを「国家資金運営」と分類して、各社から抗議された。これらのメディアは政権からの圧力に左右されないよう、BBCは受信料、NPRやPBSは寄付で運営している。NPRとPBSはツイッターから脱退した。

 こんな運営だから、イーロン・マスクがCEOになってから、ツイッターの広告クライアント上位1000社のうち半分以上が広告を止めた。

 批判を浴び続けるイーロンは去年12月18日、自分はツイッターのCEOを辞めるべきか続けるべきか、ツイッターユーザーの投票に委ねると宣言した。「なんだかんだ言われても自分は人気者だから」という自信があったのかもしれないが、1750万票以上の投票で、57・5%がイーロンのツイッターCEO辞任に賛成した。その後、12月28日にイーロンは「自分は多くの失敗をした」と認めた。

 それから半年近く経って、ついに次期CEOが決定した。リンダ・ヤッカリーノ氏は1963年生まれ。彼女は、NBCテレビとユニバーサル映画を収めるNBCユニバーサル社の広告担当として成果を上げており、ツイッターが失ったクライアントを取り戻すことを期待されている。

2023.11.21(火)
文=町山智浩