〈「お前は俺の子じゃないな」学生時代はドラッグに溺れ、自伝には非難が殺到…ヘンリー王子が自分を兄の“スペア”だと思うワケ〉から続く
アメリカでは、政界を中心に陰謀論者や原理主義保守派の暴走が止まらない。ここでは、現地在住の映画評論家・町山智浩氏がリアルタイムのアメリカをレポートした『ゾンビ化するアメリカ』(文藝春秋)より一部を抜粋。
ツイッター社を買収後、批判を浴び続けてきたイーロン・マスクの運営を振り返る。そして、後任となった女性CEOが背負わされる役割とは――。〈初出は「週刊文春」2023年6月8日号〉(全4回の4回目/最初から読む)
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批判だらけのイーロン・マスク
ツイッター社の新CEOにリンダ・ヤッカリーノ氏が就任すると発表された。
ツイッター社を440億ドルで買収したイーロン・マスクは去年の10月に同社のCEOになったが、やることなすこと失敗だらけ。まず7500人いた社員を1000人に減らした。減らしすぎてシステムのメンテナンスもできず、エラーは日常茶飯事になった。
また、デマや陰謀論、テロや差別など、危険なツイートを監視するスタッフを辞めさせたため、ひどいツイートが激増した。
選挙デマを飛ばしていたドナルド・トランプのアカウントの凍結についてイーロンは「あれだけのフォロワーを持つトランプを凍結したのはビジネスとして間違っていた」と言って、凍結を解除したが、既に自分のSNS「トゥルース・ソーシャル」を所有しているトランプは戻ってこなかった。
その一方で、イーロンは自分に批判的なジャーナリストのツイッターアカウントを停止した。CNNのドニー・オサリバン氏、ニューヨーク・タイムズ紙のライアン・マック氏、ワシントン・ポスト紙のドリュー・ハーウェル氏などだ。抗議を浴びて復活させたが、実にみっともなかった。
また、イーロンはユーザーの本人認証チェックマークを、月8ドル払えば誰にでも提供する「ツイッターブルー」なる有料サービスに切り替えた。
2023.11.21(火)
文=町山智浩