梶 いやいや(笑)! すばらしかったです。同じ収録ブースにいたほかの役者さんたちも、古川さんによる一人二役のメフィスト親子の会話シーンに盛り上がっていましたよ。
バディ2人が語る本作の見どころ
古川 今回、梶さんは緻密な演技プランによって89年版『悪魔くん』とは全然違うものをつくり上げたな、と感じています。一郎が生まれながらに背負わされた十字架……、それは父親との確執とか出生の秘密とか、そういったところをきちっとふまえ、それゆえにツンデレになり、コミュ障になっているな、ということがわかるんです。
そして、メフィスト3世との距離感でいえば、「つかず離れず」って言葉があるけど、僕は「つかず離れず、離れず」って距離感でやってみました。メフィスト3世は家に帰ってきて「なんだ、あんなヤツ!」なんて愚痴をこぼすんですけど、愚痴を言うってことはずっと引っかかってるわけで、じつは愛情の裏返しみたいなところもあるわけですよ。あの距離感は、僕は好きですね。その距離感が、お話が進むにつれて変わります。ずっと観てくださる方は、そのグラデーションがわかるんじゃないでしょうか。
梶 埋れ木一郎は、ロジカルでシニカルなキャラクター。最初の段階では、人間の心がないように感じられます。そこから物語を通して、メフィスト3世とのやり取りを経ていくなかで、少しずつ人間らしい部分が見えてくる。役者としての「もっと感情を表現したい」という欲求を極力削ぎ落とし、そのうえで、今回はどこまで心を開くべきなのか、毎話トライアンドエラーを繰り返しながら、チューニングしていきました。
――本作の見どころをお教えください。
古川 水木ワールドが全開なところです。人間は善と悪に二分できるほど単純な存在ではなく、いろいろな面を持っていて、それらすべてを許容する水木先生の眼差しみたいなものをどのキャラクターからも感じられます。いち水木ファンとして、今回のアニメをきっかけに、宝物のような水木作品にもっと触れてもらえたらな、と思っています。
梶 私ごとですが、この収録期間中に子どもが生まれたこともあって、親子のドラマにすごく胸打たれましたね。本作は人間の闇を描いた作品ですが、同時に救いのある物語だなとも感じています。以前から『悪魔くん』を愛されている方も、新しく興味を持ってくださった方も、どなたでも楽しんでいただける作品になっているかと。
取材・文=加山竜司
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2023.11.13(月)
取材・文=加山竜司
撮影=細田 忠