山田孝之くん、伊勢谷友介さん、窪田正孝くんに松方弘樹さんも大変そうだったけど…

 13人の刺客を演じた中には、役所広司さんを始め山田孝之くん、伊勢谷友介さん、窪田正孝くんに松方弘樹さんもいらっしゃいましたけど、「昨日は朝まで撮影だった」などとみなさんが話している一方で、僕は家臣役の市村正親さんと撮影後に美味しいものをいただいたりして。それが意外と反響のある作品になったので、ちょっと申し訳ない気がしました(笑)。

 肩の力が抜けていた、ということなのかもしれません。三池崇史監督の演技指導もとてもわかりやすくて、現場の空気が本当によかったんです。三池組はあれだけディープなものを作るのに、怒鳴る人なんかひとりもいない。10年前はまだピリピリした現場が多い時代でしたけど、穏やかなんですよね。

 そういう意味では穏やかに、楽しくやっていただけだったので、完成作を観たときに「え!」って。それくらい肩の力が抜けていたから、自分の中の極悪さや狂気みたいなものが出やすかったのかもしれません。

 

――最後に役所さん扮する御目付役と対決するシーンがありますが、あらためて考えると『笑の大学』(2004)に主演していたふたりですね。

稲垣 そうなんです。僕は初めから意識していましたよ。『十三人の刺客』の現場で役所さんと最初にお話しした時、「『SmaSTATION!!』で僕が監督した『ガマの油』のこと、変なふうに言ってたでしょう?」ってチクッと言われたんです。『SmaSTATION!!』ではその月の公開作に順位を付けたりしていたので、ちょっと皮肉めいたことを言ってしまったのかな。

 もちろん役所さんは冗談なんですけど、少し気まずいなと思いながらご一緒していました。でも面白かったな。『笑の大学』ではまったく違う役でご一緒させていただきましたけど、いま思うと当時の役所さんの年齢を僕はもう越えているんです。当時の役所さんが40代後半で、僕は31歳。なにか感慨深いですよね。

2023.11.04(土)
文=門間雄介
撮影=榎本麻美/文藝春秋
メイク=金田順子
スタイリング=黒澤彰乃