稲垣 もっとやりたかったんですけどね。『SmaSTATION!!』で他の人の映画をとやかく言うだけの立場になってしまっていたので(笑)。東京国際映画祭でも、メンバーがレッドカーペットを歩くところを僕がインタビューしに行ったりしたんです。だから『半世界』(2019)で初めて東京国際映画祭のレッドカーペットを歩けた時は嬉しかったな。
ちょうどその期間は「世界に一つだけの花」を出したあとのころで、グループの仕事が忙しかったんです。僕が31歳から37歳になるあいだのころですよね。ただ本音を言うと、もうちょっと映画に出たかった。
ドラマはやらせてもらっていたし、個人の活動も充実していたけど、映画の仕事をやりたいなとすごく思っていました。もちろん声をかけていただかなければ始まらないことですけどね。自分の体はひとつだし。でも30代のあの時期でないとできないような役を、もう少しやっておきたかったなという思いはあります。
年間100本以上映画を見続けた稲垣吾郎が学んだこと
――ただそのブランクのあいだ、稲垣さんは『SmaSTATION!!』で映画について発言しつづけていました。「好きか嫌いかというと好きじゃない」とか、「期待外れだった」とか、かなり辛辣にコメントしていましたよね。
稲垣 面白おかしく編集されていたような気がします。けっこう好き勝手に言うみたいな。僕の前におすぎさんが映画のコーナーを担当されていて、そこからのバトンタッチだったという関係もあったのかもしれません。
でもそこで映画の観方を学んだのは、いま考えると大きかった。『anan』での映画連載を含め、毎月5本以上、年間で100本以上の映画を観ることが、あのころは仕事になっていました。それは俳優としてもいい経験だったのかなと思います。
映画評もインタビューも、対談をさせていただくことも、すべて好きなんですよ。それで何千本と映画を観てきたわけで、それは自分の蓄えにも、今後の引き出しにもなっているはずだから、そういう仕事をやらせてもらえたことはよかったなと。いまの自分に生きているはずですからね。ただ観れば観るほど、自分も演じたいという欲は高まっていきました。観るのも好きだけど、やっぱり出るというかたちで映画に関わっていきたいなと思いましたよね。
撮影 榎本麻美/文藝春秋
メイク 金田順子
スタイリング 黒澤彰乃
〈「人見知りで人前に立ちたくない。日本のスターに憧れたこともない」それでも稲垣吾郎(49)が“自分は俳優になれる”と感じた瞬間〉へ続く
2023.11.04(土)
文=門間雄介
撮影=榎本麻美/文藝春秋
メイク=金田順子
スタイリング=黒澤彰乃