また、「冷肉蕎麦」ならつゆを別碗にしたり、別碗の場合は温・冷を選べるようになっているとか。きめ細かいサービスだ。

 食べ終わる頃、やかんに入ったそば湯が登場する。これでつゆを割って飲むと実にうまい。ほとんどのメニューにそば湯がサービスされる。

アイデア満載の「焼きおにぎり」

 そして、サイドメニューで注文した「焼きおにぎり」が秀逸だ。アツアツの焼きおにぎりをかじると、魚を焼いたような香ばしい味が広がった。「あれ? 焼き鮭でも入っているのか?」と思い質問したところ、出汁に使った鰹節を利用しているというのだ。

 

 長女の彩乃さんは「食材のSDGsを常々考えていた。出汁をとったあとの鰹節を捨てるのは本当にもったいない。何かよい使い道がないか試行錯誤した」という。

 そこで、一番出汁をとった後の鰹節に返しとバターを加えごはんで握って、焼きおにぎりにすることを閃いたという。注文が入ってから焼くと焦げた醤油と鰹節の味が一気に広がって、一味違う焼きおにぎりの完成である。いいアイデアである。

そば屋の「焼きそば」とは…?

 人気メニューを訊くと、「冷肉蕎麦」、ラー油ではなく唐辛子を利かせた「辛肉蕎麦」(1050円)、きつね・煮卵・肉・ネギがのった「特製蕎麦」(1200円)あたりだという。そんなメニューの中に「焼きそば」(1200円)というメニューを発見した。同じそばを使うというので、さっそくハーフで注文してみた。待つこと10分。たっぷりの花がつおがのって登場した。

 焼いたそばを食べてみると、もちっとしっとりとした食感である。ソースは使わず、出汁と返し、油、胡椒などの香辛料を使い、ネギやニンジンと炒めている。香ばしい香りがたまらない。夜のお酒のメニューに最適だ。日本酒や焼酎もたくさん置いてあり、おつまみメニューも昼から対応しているそうだ。

女将さんや娘さんたちのアイデアを加え、独自の味を構築

 最後に女将さんの美佐子さんからメッセージをいただいた。「町屋店は、私と娘たち、スタッフの亜里沙さんで切り盛りしています。おそばのトッピングやサイドメニューも色々アイデアを出し合って、飽きのこないメニューをそろえるようにしています。若いお客さまでも楽しめるように、増量サービスやテイクアウトにも対応しています。町屋駅から歩くと7分と少しかかりますが、足立保塚店も含め是非お越しください」

2023.11.01(水)
文=坂崎 仁紀