「なかには、旦那さんをいかに攻略して写真集を手に入れるかといった声や『夫婦で協議して購入を決めました』というコメントもありました(笑)。男性で『まさか男の写真集を予約する日が来るとは』と投稿していた方も見かけましたし、幅広い年齢や性別の方が興味を持ってくださって……ものすごく嬉しいです」

 

”崩れ”に感じた色気の神髄

 2020年にNHKの朝ドラ『エール』にてナレーションや演者を務めたのを機に、ドラマ『最愛』『リバーサルオーケストラ』や実写映画『イチケイのカラス』など、俳優としての出演も急増。お茶の間に津田の姿が浸透するにつれ、ファン層も拡大していったという。

「ありがたいですよね、本当に。それと不思議なことに、年齢を重ねるにつれて“色気がある”と言っていただけるようになりました。より本来の僕らしく、ふわふわとマイペースな面を見せるようになってきてからですね。いい具合に力が抜けてきたのかもしれません」

 無理に装うのではなく、内側から自然とにじみ出る。そんな知性ある色香の持ち主である津田が「色気を感じる」ものとは?

「本、舞台、映画、絵画……作品に触れた折に感じますね。例えば小説の文体から、色気がふっと薫る時がある。三島由紀夫の美学と葛藤の狭間であったり、太宰治や芥川龍之介の描く人が滅びていく過程であったり。かっちりとした服をわずかに着崩すと色気が出るように、ストイックなものが崩れ、ある種の“抜け感”が生まれた瞬間――そこに色気の神髄があるのではないかと」

 だからこそ、将来は「確固たる美学を持ちながらも力が抜けまくった、カッコいいジジイになりたい」とほほ笑む。

「着物姿にハットを被ったおじいさん、銀座でお見掛けしませんか? 一見するとちょっと怖いくらいに隙がないんだけれども、実は優しさや茶目っ気も持ち合わせている。そんな老人が目標ですね」

 

「ファンに一言“ささやき”を」とオーダーすると…

 津田はかねてから「日本の“若さ至上主義”はもったいない」と感じていたという。言葉のひとつひとつを確かめるように、静かに想いを語ってくれた。

2023.10.21(土)
文=「週刊文春」編集部