「歴史情緒のある町が昔から好きなんです。ゆったりとした空気感が、写真集のコンセプトである“自然体”とマッチするのではと思いまして。ロケ中は甘いものをたっぷり満喫しましたねぇ。パンケーキでしょう、プリンに、あぶり餅に……。行列必至の有名な喫茶店にも連れて行っていただいて。本当に、グルメ旅行みたいになっちゃいました」
できたてほやほやの写真集をめくりながら、懐かしそうに目を細める。気負わない佇まい、あるがままの呼吸と体温を落とし込んだ『ささやき』は、“津田との旅”を写したアルバムでもある。隣を歩き、笑い、そっと語り掛けてくれる。すぐそばに津田を感じる、非日常な日常へと誘ってくれるのだ。
「古書店で本をめくっているカットなんて、本当に日常の延長線ですね。いちばん力が抜けているかもしれません。中華料理店での僕も“ナマ”の感じ。メニューに迷っていたり、ラーメンを啜ってモグモグしていたり……(笑)。美味しかったですねぇ。とってもシンプルな昭和の一杯でした」
“見たことのない姿”も“見たかった姿”もすべて――キャッチコピーの通り、シチュエーションは多岐にわたる。愛用しているカメラをぶら下げて河川敷を散歩する「等身大のツダケン」もいれば、旅館にて着流しに身を包み、遠くを見やる「しっとり大人なツダケン」も。津田自身が「新鮮」と感じるシチュエーションもあったという。
「これまであまりアクティブな姿を見せてこなかったと思うのですが、今回の僕はバッティングセンターでバットを構えています(笑)。普段スポーツは全然しないです。スタイル維持の秘訣ですか? うーん……時間を見つけてジム通いするくらいですかねぇ。写真集に合わせて、ちょっとだけ鍛えました」
”ポップなツダケン”に大苦戦⁉
引き締まった体で着こなした衣装は10着に及ぶ。淡い色合いのニットやゆるりとした開襟シャツは「オフ」の顔を思わせる。
「実は普段着に近いのは、表紙で着ている黒スーツです。今日の私服も全身黒に黒縁メガネですけど、基本は黒か白ばっかりなので。取材撮影でもスタイリッシュなブラックのイメージを求められることが多いのですが、今回の表紙はどこか優しげな雰囲気ですよね。スーツの生地に表情があるおかげで、柔らかいニュアンスが生まれているのかな」
2023.10.20(金)
文=「週刊文春」編集部