意味は10年後にわかってくれたらいいと思って書いている

――アイドルソングの歌詞を考えるときには、どうやってアイドルの子たちの気持ちに寄り添っていくのですか?

 街にも出ますし、自分の過去の記憶をたどることもあります。ざっくりとした表現になっちゃうんですけど、自分を思い返しても10代、20代前半って愚かだったなあと。視野が狭くなることもあると思いますし、若かった頃は自分も友達もアホだったこともありますし。その時代らしい悩みはもちろんあるけど、ガーッと視野が狭くなってしまうことに関しては普遍的だと思うんですよね。アイドルソングは聞いている人を勇気づけるために、“正しく明るい歌”を歌うし、作詞家として求められることを書いてはいきたいのですが、人間は弱くて愚かだという一面も書きたいなとは思っています。「バカだなあ~」って呆れちゃう。

――Juice=Juiceの『Never Never Surrender』の中に、「ひとは脆いから強がっていこうよ」という歌詞があります。この曲が発表された5年前は、歌詞とは反対の「そのままのあなたでいい」ということが世の中的に強く言われていたと記憶しているのですが、当時はどんなことを思って書かれたのですか?

 依頼を受けた経緯に、当時の音楽シーンの流れがあるのは前提として。Juice=Juiceはグループの勢いがあり、強いイメージもありました。そのままでも素敵ですけど、強い人ってそんなにいっぱいいるかな? とも思っていたんですよね。むしろ、ありのままでいるってなんだろうと考えることの方が多かった。だから、よくよく読むとすごく揺れていたり、弱い部分がある人を書きたいなって。

――ご自身が書いた歌詞に対するリスナーのあまりの過大解釈に対して「言葉の毒親」になるべきかというテーマを、今回の本に書かれていました。

 曲という子どものような存在に対して毒親のようなムーブをしていいのか、ということですよね。これはさすがに傷つく人が出てくる解釈だよなって思うときは、書籍などで触れることはあります。SNSじゃなく、文脈が切り取られない場所で。ただ、きょうびのアイドルのファンは世代も性別も幅広いので、多様な解釈があることはいいことだと思っています。

――児玉さんの歌詞は説明が少なく、アイドルソングの中でも特に詩的ですよね。それは意識されていますか?

 そう言ってもらえて嬉しいです。

 最近はそうでもないですが、かつてアイドルやアニメソングが、ある意味、音楽として小馬鹿にされがちなポジションにあったことを逆手にとって、これからも自由に書いていたいと思っています。特に子供向けの歌では、意味は10年後にわかってくれたらいいなと思って。10年後にこの歌ってこういう意味だったんだとか、大人になっていく過程で、あの曲のこと思い出すなって思ってもらえるような歌詞がいいなって。「だから意味のある、いいことを書こう」というのはちょっと違うんですけど、すごいふざけた歌だったけど、懐かしくて聞き返したときに、今のその人の人生に寄り添えたらっていうのは意識します。

作詞家、作家。1993年神奈川県生まれ。アイドル、声優、テレビアニメ主題歌、キャラクターソングを中心に作詞提供。2021年、『誰にも奪われたくない/凸撃』で小説家デビュー。2023年には、『##NAME##』(河出書房新社)が第169回芥川賞の候補作となった。

江戸POP道中文字栗毛

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2023.10.21(土)
文=藤井そのこ
撮影=平松市聖