本書『終わらない戦争』は、二〇二二年秋から二〇二三年の夏くらいまでに行われた六本の対談を再録したものです。媒体もテーマもいろいろではあるものの、どの対談もウクライナでの戦争が大きな比重を占めています。
実は同じようにウクライナ戦争をテーマとした対談集を私は二〇二二年九月に出しているのですが、それから一年経ってもまだ戦争は終わらず、結局二冊目が出るに至ってしまいました。本当は前回の『ウクライナ戦争の200日』に続いて『ウクライナ戦争の500日』にしようという案で話が動いていたのです。しかし、開戦五百日目はあっという間に過ぎ去ってしまい、それでも停戦の気配はまるで見られないのでこういうタイトルになりました。
この間、ウクライナの戦場では、ハルキウ及びヘルソンでのウクライナ軍の反撃、民間軍事会社ワグネルによるバフムトへの攻勢、そして南部ザポリージャ正面におけるウクライナ軍の再度の反撃、と大きく事態が移り変わりました。また、ウクライナの都市や生活インフラがロシア軍の空襲で激しく攻撃され、ウクライナ側も報復としてロシアへのドローン攻撃を行う、といった形で、戦場の外部における展開にも目まぐるしいものがありました。
したがって、それぞれの対談の内容には若干情報が古い部分もありますし、その時点における不確実な予想や、外れた分析なども含まれています。これらの点については註で最低限の補足を行うなどはしたものの、基本的にはそのまま再録することにしました。
最新の知見に基づいた分析は、最新の刊行物で読むことができるわけです。それよりも、ある時点における限られた(そして多くの場合は信憑性の不確かな)情報を専門家たちはどのように捌いているのか、という思考プロセスを記録しておくということに、この種の対談本の意義はあるだろうと考えました。
このスタンスは、前回の対談本である『ウクライナ戦争の200日』と基本的に同じです。ただ、今回の『終わらない戦争』では、六回の対談全てが研究者との対話となりました。その分、「専門家の思考プロセスを垣間見る」という色彩の濃い一冊になったのではないかと思います。
2023.10.13(金)