和菓子の一つ「金鍔(きんつば)」は、江戸時代中期、京都で生まれた「銀鍔(ぎんつば)」がルーツといわれています。日本刀の鍔に似た丸い形をしていたので、そう呼ばれるようになったとか。その「銀鍔」が江戸に伝わり、「金鍔」と変わったのは、「金の方が縁起が良い」「京は銀貨幣文化で、江戸は金貨幣が主流だったから」など、諸説あるようです。
元々は鍔の形で丸かったのを四角に改良したのが、明治10(1877)年創業の、神戸・元町の紅花堂(現・本高砂屋 ※本来は、はしごだか)創業者・杉田太吉。四角くして量産できるようになった「金鍔」は、神戸の港で働く人や庶民のおやつとして、あっという間に広がりました。今も、元祖四角「高砂きんつば( ※本来は、はしごだか)」として焼きたてにこだわり、元町商店街にある神戸元町本店では、職人さんが手焼きしている様子を見ることができます。
そんな「きんつば」の専門店が大阪にできていると知って、訪ねてみました。
「チンチン電車」「ちん電」と呼ばれて親しまれている阪堺電車。天王寺駅前から上町線に乗り、3つ目の東天下茶屋駅で下車して歩くこと約4分。阿倍晴明ゆかりの安倍王子神社の向かい、店頭の窓口できんつばを販売する「きんつば へい」。窓辺に、スティック状で2センチ角×6センチのスティック状のきんつばの見本が6、7種類並んでいます。
「一人で、あんこを炊いて1個1個6面を手焼きするので、たくさん作れないんです」と、店主の木村桂子さん。「へい」は、英語の挨拶、“こんにちは”や“やあ”という「hey」、また、平常心を心がけたいと「へい」にしたのだそう。
きんつばの見本、取材当日は7種類並んでいました。
定番は、「きほん」「しお」「抹茶」の3種類。
「きほん」は、餡に塩が入らない、あっさり味。甘さ控えめで、食べると小豆の風味がほんのり広がります。
「しお」の餡には、淡路島産の藻塩が入っていて、甘みが際立ちます。きんつばらしい味わい。
「抹茶」は、抹茶を皮に練り込み、仕上げに上面にも振ってあります。程よい抹茶の苦みが大人向き。
他にも、いろいろな種類が登場。
粒餡の間に軽くつぶした餅を挟んだ「もち」は、おはぎのイメージ。むっちりした食感が楽しい。
ホワイトチョコがけの「あんチョコ」は、抽出したアールグレイ紅茶を餡に加えてあり、食べると香り立ちます。アールグレイ好きにはたまらない、他にはない洋菓子のような味。
「あんチーズ」もオリジナル。クリームチーズとオレンジピールを粒餡でサンド。ワインと合わせたい。
「くりきん」は、餡に栗の甘露煮をたっぷり混ぜ込んだ秋らしい一品。他、秋冬に登場するのは「おいも」。紅はるかやシルクスイートを蒸してバターと砂糖を加えた餡は、スイートポテトのような味わいなのだとか。春には「さくらもち」という名前のこし餡のきんつばも作ったと言います。
2023.10.08(日)
文・撮影=そおだよおこ
一部写真提供=きんつばへい