阪急電鉄今津線・小林(おばやし)駅から東へ徒歩約8分。宝塚市の住宅街にある『miko』は、フランスで料理を学び、料理教室を主宰する友人が「おいしい!」と教えてくれなければ、フランスの焼き菓子の店だとは気づかないでいたでしょう。

 小さな看板を目印にお店を訪ね、ドアを開けるとお菓子を焼く甘い香り。カウンターにはずらりとお菓子が並び、店主であるmikoさんが笑顔でお出迎え。

 まずは、お菓子をご紹介しましょう。

 「アマンディーヌ」は、その名のとおり、アーモンドを使ったお菓子。17世紀、パティシエで詩人だったラグノが考案したといわれています。ここのアマンディーヌは、たっぷりのアーモンドクリームにチョコレートを挟んだmikoさんのオリジナル。アーモンドの豊かな味わいが、コーヒーによく合います。

 表面の格子模様が印象的な「コンヴェルサシオン」。会話という意味で、18世紀の人気小説「エミリーの会話」からのネーミングだとか、会話が弾むからだとか、諸説あるお菓子です。mikoさんのものは、中がアーモンドクリーム。パリッ、サクッとした生地で、コクのあるフィリングだから、やはりコーヒーと合わせて味わいたい。

 「いちごとルバーブのショソン」の「ショソン」とは、スリッパのこと。まさにスリッパの先のような形です。よく知られた「ショソン・オ・ポム」はりんごのパイですが、こちらは、初夏に出回る蕗のようなルバーブといちごを合わせたフィリングをパイ生地で包んで焼き上げたもの。甘酸っぱく、サクサク食感も魅力です。

 「ファーブルトン」は、ブルターニュ地方のお菓子で、元々は小麦粉を牛乳で煮ただけのものでしたが、今では卵や砂糖プルーンも入れて作られています。堅焼きプリンのようなもちっとした食感が特徴。

 窪みという意味の「クルーゾワ」は、リムーザン地方のノワゼット(ヘーゼルナッツ)のお菓子。レモンが香るmikoさんのアレンジで、夏に食べたい風味になっています。

 「コロンビエ」と言う名前はちょっと不思議。調べると「コロンブ」は平和の象徴の白い鳩のことで、「コロンビエ」はその小屋のこと。プロヴァンスやフランス南西地方で聖霊降臨祭に食べられるお菓子です。セミドライアプリコットが使われていて、いかにも南仏らしい味わい。

 コク深い味わいの「パイナップルとキャラメルのケイク」。パイナップルをバターでソテーした後、ライムでマリネした一手間がきいています。キャラメルを組み合わせて、さらに大人っぽい風味。

 mikoさんが「こだわりのパイ生地で、あえて大きめにしました」と言う「パルミエ」。大人の手のひらサイズのパイをガブリと頬張ると、とても幸せな気分に。サクサク食感で、バターの香りが口いっぱいに広がります。

 「ルバーブのタルト」は、ルバーブにフランボワーズを合わせたメレンゲの個性あふれるタルト。メレンゲもフランス菓子らしくてステキです。

 「パルミエ」と並んで人気があるのが、定番「マドレーヌ」。mikoさんが「生クリームやはちみつを使った配合です」と説明してくれたとおり、口溶け抜群でリッチな味わい。まとめ買いする客が多いのも納得。

 冷蔵ケースの中には、チョコレートのお菓子が並んでいます。

 「バルケット・オ・マロン」は、カシスの酸味がきいたタルトにマロンクリーム、マロングラッセ、チョコレートの組み合わせ。

 「シャテーヌ」は、栗がゴロゴロ入っていて、チョコレートとの味わいを楽しめる一品。

2023.07.09(日)
文・撮影=そおだよおこ