台湾の屋台で人気の胡椒餅。その専門店、その名も『胡椒餅 福丸』は、2020年12月オープン。お店があるのは、京都の四条通と御前通の交差点の北東角で、阪急京都線西院駅から徒歩約5分。

 入ってすぐにボリュームのある大きな胡椒餅が並んでいて、テイクアウトはもちろん、イートインもOKです。

 胡椒餅の種類は「醤油味」「甘味噌味」に、最近、定番になった「カレーチーズ味」。どれも表面にはゴマがたっぷり。こんがり焼かれた皮の中に、たっぷりの豚肉とネギが入っており、焼きたてはとてもジューシー。その名のとおり、黒胡椒のピリリとした後味がたまりません。

 「醤油味」は、生姜、ゴマ油を使っており、後口に黒胡椒の刺激がピリッと広がります。

 「甘味噌味」は、甜麺醤を使ったコク深い味わいに胡椒のさわやかなスパイス香が加わり、クセになる味わい。

 「カレーチーズ味」は、カレーの風味にチーズのまろやかさと胡椒のスパイシーさがプラスされて、カレーファンにはたまらない味です。

 「どれにも、味付けに五香粉を使っているのがポイント。材料は国産にこだわっています」と、胡椒餅を作る山村優佳さん。

 生地は、国産小麦粉2種類をブレンド。国産豚のみを焚いて抽出したラードと、ごくわずかのイースト、塩、砂糖を加えて、冷蔵庫で一晩かけて発酵。

 豚肩ロース肉はミンチを使うのではなく、食感にこだわるため、店で大きめの角切りに。それぞれの味付けをして、ザクザク切った九条ネギと一緒に、伸ばした生地で1個1個手で包みます。「二次発酵はしません」。

 台湾と同じような窯で焼くのも特徴。店の奥に、日本で唯一のタンドール専業メーカー「神田川石材商工」製のものが置かれています。

 「遠赤外線で、表面はカリッと香ばしく、なかはジューシーに焼き上がります」と山村さんはにっこり。

 窯の側面に1個ずつ手で貼り付けて、270度で約13分程焼成。生地の発酵が進んでしまうと、焼いている途中に落下することがあり、「教えてくれる人もなく、窯を使いこなせるようになるまで大変でした」と苦笑い。

 山村さんは、コロナ禍まではクッキングスクールの講師として活躍。教室が閉鎖になり、胡椒餅の専門店をやろうと決心したのだそう。「台湾旅行で食べた胡椒餅のおいしさが忘れられなかった。台湾の方にレシピを教わり、それを元に自分で工夫した味です。胡椒はしっかり効かせています」。

 食材にこだわる山村さん。使っているのは、豚肉、ネギ、生姜など、国産のもの。添加物を使わないから、黒胡椒や甜麺醤を効かせた味付けもシンプルでいて、後口のキレがいい。

 「店で焼きたてを食べてもらいたい」と、山村さんは、胡椒餅と国産のクラフトビール、自家製焼売のセットをイートインで提供。コロナ禍が落ち着いてきた現在、カウンター席でクラフトビールを飲みながら、熱々の胡椒餅を味わう客も増えてきました。

 焼売も、豚肉、椎茸、タマネギなど国産の材料、無添加にこだわり、皮も粉と水と塩だけの無添加のもの。冷凍での持ち帰りができ、好評なのだとか。

「胡椒餅のおいしさをたくさんの人に知ってほしい」。

 カウンターで焼きたての胡椒餅にかぶりつきながら、山村さんがタンドール窯で焼く様子を眺めていると、台湾に行った気分になれるでしょう。

胡椒餅 福丸

所在地 京都府京都市中京区壬生仙念町31
電話番号 075-812-1601
Instagram:@koshomochifukumaru

Column

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2023.04.09(日)
文・撮影=そおだよおこ