寝かしつけているはずが、いつの間にか自分が先に寝落ちしていることも珍しくなく、数十分後、ときに小一時間後に目覚めて、晩ご飯の食器洗いを済ませ、洗濯物をたたみ、翌日の朝ご飯の仕込みを終えて時計を見たら、そうです今日という一日は終わりでーす。いや、マジ家事終わらんな、なのです。
忙しいというだけなら、職場の仕事だって相当に忙しいものです。私でいえば、ニュースを読んでいるあいだはそれはもう秒刻みの仕事ですし、急に原稿を差し替えられて内心は心臓バクバクでも涼しい顔をして読まなくてはなりません。インタビューをしているあいだは、どんな言葉をどうやって引き出せるか、脳みそはフル回転です。でも、そこには「緩急」というものがあります。ニュースを読む前には、情報を整理してじっくり咀嚼する時間がありますし、心臓バクバクの時間はほどなく終わります。お昼ご飯はひと仕事終えたらゆっくり食べられます。
でも、家事育児というのは、考えるすき間がないというか、こちらの事情を無視してどんどんやるべきことが押し寄せてくるのだと、育休を取ってみて、心底、痛感しています。
何度でも言わせていただきます。いや、マジ家事終わらんな、です。
ましてや新生児を家庭に迎えるのです。好きなときにおっぱいを飲み、好きなときにウンチをし、好きなときに寝て、好きなときに目覚め、その都度、大きな声で泣きます。そして、新生児に関するほとんどのことは、お母さんにしかできなかったり、お母さんのほうがうまく対応できたりします。おっぱいも、沐浴も、寝かしつけも。
ふぅ。Hくん、読書の時間がないと嘆くのは少々贅沢かもしれんで。お母さんに読書の時間がどれだけあるか、我々男は考えなあかんのかもね。
おそるおそる育休
定価 1,870円(税込)
ミシマ社
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)
2023.09.26(火)
文=西 靖