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300年の歴史をもつ陶芸の里でひたむきな心から生み出される美しい器
◆森山窯[大田・温泉津]
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民藝の聖地・島根。モノづくりへの思いを大切にする作り手が数多い。
柳宗悦らとともに民藝運動を主唱した陶芸家・河井寛次郎、その最後の内弟子が温泉津・森山窯の森山雅夫さんだ。ひとつ屋根の下、師と家族同然に過ごしながら、その教えを直に授かった。

「河井先生は、優しい方で、人のいいところを見てくださる人でした」と森山さん。その後、武内晴二郎、荒尾常蔵の両氏のもとでさらに研鑽を積み、1971年に独立。以来50余年、83歳となる今年も春・秋のやきもの祭りには、登り窯に臨む。
「17才で内弟子になり、それからずっと器作りだけを続けてくることができたのは、本当に幸せなことです」

良質な土に恵まれ、約300年前より名もなき陶工たちが窯を築き、水甕などの生活陶器を手がけてきた温泉津。
一時は廃絶寸前だった陶芸の里を受け継ぎ、現在は民藝の道を守る3つの窯が工房を開く。
そのひとつ森山窯は、河井寛次郎らの指導を受けた森山雅夫さんが1971年に独立して開いた窯元。

師たちの教えを胸に、ひたむきに作陶と向き合い、「日曜は休みですけれど、午後には工房に来てしまいます。やっぱり好きなんですね」と森山さん。
深みのある青色の呉須釉をはじめ、独自の落ち着きを湛えた器が美しい。
森山窯
所在地 島根県大田市温泉津町温泉津イ3-2
電話番号 0855-65-2420
営業時間 9:00~17:00
定休日 日曜
交通 JR温泉津駅から徒歩約18分
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Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
2023.09.19(火)
文=矢野詔次郎
撮影=鈴木七絵
協力=島根県観光連盟
CREA Traveller 2023 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。