――西澤さんにも卒業旅行に行く友達にも地獄のタイミング……。

西澤 もう大泣きでした。そのタイミングでまさか振られるとも思っていなかったので。その日の夜は寝られずにベランダで1人体育座りしながら、ずっと明け方まで泣きました。

 次の日、広島に旅行に行ったんですけど、もう目もぱんぱんに腫れているし、友達は私の失恋話を卒業旅行中ずっと聞かされる(笑)。牡蠣が好きなので、もう食べてやる! という気持ちで1人で2皿ぐらい食べたら、気持ち悪くなっちゃって。旅行どころじゃなくなってました。

――泣きっ面に“カキ”ですね……。アナウンサーはキー局でなく、フリーの道もあったと思うんですが、なぜそちらを選ばなかったんですか。

西澤 大学時代にミスコンをきっかけに芸能事務所に入って、学生キャスターの仕事をやっていたんですが、現実的に考えた時に、今の自分の仕事量ではやっていけないなと感じたんです。

 大学を卒業したら自立して、何をやるにも自分のお金でやりくりしなさいという親との約束もありました。自分できちんとお金を稼ぐことができる道に進まなきゃいけないと考えた時に、私の実力ではフリーアナウンサーとしてでは絶対に食べていけないと、当時実感したんです。そこで、何かしらの形でアナウンサーの仕事をやるという何の保証もない希望だけを持ちつつ、本業は別の企業にしようと自分を納得させていました。

撮影=杉山拓也/文藝春秋

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2023.08.29(火)
文=徳重龍徳