演劇界期待の新鋭、加藤拓也が書き下ろした新作舞台『いつぞやは』が、シアタートラムで幕をあける。

 かつて一緒に活動していた劇団仲間のところに、一人の男が訪ねてくることから始まる物語。結婚や妊娠、夢やお金、病気や死など、若者たちがそれぞれに直面しているドラマが、会話劇で淡々と語られていく。

 『阿修羅のごとく』以来、1年ぶりの舞台出演となる夏帆さんに、作品にかける思いと、プライベートで大切にしている旅について話を聞いた。


勉強しにいくつもりで稽古をしている感覚

──もともと夏帆さんは舞台に苦手意識があったそうですね?

 1年前に『阿修羅のごとく』に挑戦したときは、6年ぶりの舞台出演だったのですごく不安がありました。新人のようなつもりで稽古場にいましたし、学ぶことも多かったです。

 お芝居をするという意味では、舞台と映像作品とでやることはそんなに変わらないんです。でも作っていく過程が違いますし、見せ方も違う。映像はその場で段取りをして合わせて、その日に撮り進めていくので、瞬発力が必要なんですね。けど舞台は1ヶ月間稽古をしながら、台本を読み込んでいろいろ考えたり、探っていく時間がある。使う筋肉が全然違う気がしますね。

 今も変わらず、勉強しにいくつもりで稽古をしている感覚ですが、前回とはまた違う作品なので、すごく新鮮な気持ちで臨んでいます。役者同士が密にコミュニケーションを取ることも舞台の特徴なので、みなさんとの距離も近い感じがしますね。

──共演者の方々とは初共演だとか。

 お仕事をするのは初めてですが、お会いしたことがある方が多いので、すんなりとその場に入れた気がしますし、今では昔から知っていたような感覚に。同世代ということもあり、とても和やかに稽古が進んでいます。

──作・演出の加藤拓也さんが書かれた台本を読んだ感想は?

 本の中の登場人物が、けしてかけ離れた場所で生きている人たちではなく、これはわたしたちの物語だと思いました。読み終わった後にどう感じたのか、うまく言葉にまとめられない余韻が残って、どんなふうに稽古場で芝居が立ち上がっていくのか、楽しみだなと感じました。

2023.08.25(金)
文=松山 梢
写真=榎本麻美
ヘアメイク=秋鹿裕子
スタイリスト=李靖華