『スイート・マイホーム』は「最高の現場だな!」と思いました
――ここからは最新作『スイート・マイホーム』についても教えてください。ぞっとするようなマイホームのストーリーですが、脚本を読んでどのような印象でしたか?
この作品のキャッチコピーは「その“家”の秘密を知ってはいけない」なんですが、最初に脚本を読んだとき「あれ、意外にこれはネタバレが早いかも……?」と思ったんです。
なので、工さんに会って正直に話したら「そうなんです、なぜなら~~」と説明していただけました。ネタバレになるので「なぜなら」以下は省略しますけど(笑)。
そこで感じたのは、工さんの見ている視点は日本だけではなく世界なんだな、と。日本で観ている自分たちからしたら少し違和感があるけれど、工さんの見ている世界視点の話を聞いていたら「ああ、だからこの脚本なのか」とすごく納得しました。
――海外では「Suburban Horror(郊外型ホラー)」というジャンルが確立されていますもんね。今回、齊藤さんとは監督⇔主演俳優という関係性でしたが、現場で新たな発見はありましたか?
はい。工さんはご自身が俳優という立場でやられているので、役者の気持ちがやはり誰よりもわかっていらして、そこがすごく大きかったです。極力順撮りにしてくれたり、あとは今回子供たちがすごく多かったんですが、子役たちへの配慮も本当に行き届いていました。
子役の子が昼寝しちゃったら、無理やり起こしたりしないで「1回そのまま大人たちもお昼寝ターイム!」と小一時間くらいお昼寝の時間があったりして。「最高の現場だな!」と思いましたね。
もちろん撮影はしないといけないけど、ストレスを与えないように現場づくりをしてくれていたのは、齊藤組ならではだなと思いましたし、温かさを感じました。
――演出を受けているときもその温かさを感じるんですか?それとも別の何かを受け取るものですか?
撮影の最中でも印象的な出来事がいっぱいありました。あるシーンでは、僕のワンカットの長回しがあって、そこではあえて背中だけを撮る場面だったんです。僕が外から家に帰って玄関から2階まで上がるところを撮ったんですけど、「絶対に顔を見せないでください」と言われていました。
でも、そのときに僕が1回、横顔を見せるようなことをしてしまったんですね。すかさず工さんに「それはしないでください」と言われて。
意図を尋ねたら、顔という情報を撮ってしまうとそれだけで人間は「この人はこういうことを思っているんだ」と処理してしまうので、と教えていただいて。
だから身体の部位だけで見せる手法だったんです。それを知って「なんておこがましいことをしたんだろう! 恥ずかしい!」と思っちゃって……。
――窪田さん的には、良かれと思っての配慮だったんですよね。
いえ、配慮じゃないです。僕はやっぱり残そうとしてしまうというか。
表現の仕事なんですけど、さじ加減がいつも究極で未知だし、答えがないなあと思います。そこが面白いところでもあるんですけれど。
2023.08.31(木)
文=赤山恭子
撮影=佐藤亘
ヘアメイク=菅谷征起(GÁRA)
スタイリスト=菊池陽之介(RIT inc.)