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垣根を作らず、女性役も男性役も自分の技量で挑戦する

――確かに、退団後も男役のままいらっしゃる、というふうな感覚で以前ご取材したこともあります。

 私は性別的には女性ですが、“女優”という言葉があまり好きではなくて。尊敬している夏木マリさんがご自身のことを“俳優”と仰っていて、私もすごくその言葉に納得しているんです。

 私が現在挑戦している声優業界では、女性が男性のキャラクターを声で演じることがとても多いんです。すごくカッコいい男役芝居をする方がたくさんいます。男性が女性を演じることもあります。声の世界では、性別や年齢、時には人ですらなかったりと、すべての垣根がない世界が広がっているんです。

 今までやってきた男役をもっと磨いていきたいという思いもあり、声優の世界に飛び込みました。

――今の七海さんのお話、とても説得力があります。確かに声の世界では男女関係なく、そのキャラクターに合った声が採用されますから。

 舞台において男役を演じることは、ちょっと特殊に見えてしまうかもしれないけれど、今の私の中では至って普通のこと。自分らしくいる、ということで今後もこのスタイルで続けていきたいと思っています。

 もうひとつは、私の普段の私服や髪型を見て「普段も男役を続けている」と思う方が多いのですが、ショートカットでパンツスタイルの方ってたくさんいて、これが自分の好きなファッションなんです。私の周りの女性は、ほぼ全員ショートカットにパンツスタイルだし、先日ニューヨークに行ったときはスカートを穿いている人のほうがレアでした。

 振り返ってみると、私は宝塚に入団する以前からショートカットで常にパンツスタイルでした。退団しても“男役を貫いている”のではなく、私が好きなスタイルを楽しんでいるのだと理解してもらえると嬉しいです!

2023.08.22(火)
文=前田美保
写真=佐藤 亘