東京を中心とした都市部では、購入したマンションに5年、10年住んで売却する際、買ったときより数百万円、数千万円も高く売れることが今ではもう珍しいことではなくなってきているのだが、その額をあらためて見てみると、驚かされることが多い。

 加藤さん(37歳・仮名)ご夫婦が相談に見えたのは今から約10年前。

 結婚、出産を機に手狭になった賃貸1LDKアパートから、2LDK以上の広い賃貸マンションに移るか、それとも、どうせ高い家賃を払うのならいっそのこと買った方がよいのかと悩んでいた。

 せっかく買うのなら、やっぱり最低でも3LDK以上で専有面積は75㎡以上、一生住むことも想定すると出来れば80㎡以上は欲しいとのことだった。

 新築は予算的に到底買えないことはわかっているが、中古であっても築年数はあまり経っていない方がよいとのこと。

 ただ、予算の関係で、現在お住まいの通勤に便利な都心・準都心エリアではその広さは無理。準郊外や郊外までエリアを広げて探すか、エリアは変えずに築年数が極端に古くなることを妥協して探すしかなかった。

実際に物件を探してみると…

 実際に探してみると予算に合う物件は、やはり、都心・準都心ではかなり築年が古くなり災害リスクも気になる。築年数が比較的浅い物件は準郊外・郊外になりがちだが、全くなじみがない駅の、駅から離れた物件が多く、建物は気に入ることが多かったのだが、色々不便さを感じ、なかなか決めきれなかった。

 住み慣れた都心・準都心エリアで賃貸マンションも並行して探してはみたものの、築年数が比較的浅い2LDK以上の広さの物件となると家賃は高額だ。

 ご主人はギターが唯一の趣味とのことで楽器可能な物件を探していたが、賃貸物件は楽器不可のところが多く、楽器可の賃貸マンションは賃料が通常の物件より高くなることがほとんどだ。

 一方、購入する場合の分譲マンションはルールさえ守れば、楽器もペットも可能なことが多いことや、なにしろ「そんなに高い家賃を払うのならば、やっぱり買ったほうがいい」という結論に至った。

2023.08.23(水)
文=後藤一仁