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「稽古場で僕たちがどれだけ関係性を作って舞台上に乗せられるか」

――和田さんはたくさんの舞台で観客の方と呼吸を合わせてきたと思うので、ミュージカル化にとってすごく頼もしい方なのではないでしょうか?

 (笑顔で)はい。世界観を拡張する上で重要視していることは、文化の多様化ということ。韓国と日本では、文化の違いがあるので、韓国の人がドラマを見たときにどのように感じていたのかと、日本の方が見たときの感じ方の違いがやはりあると思います。その部分をどうやって解決して、感情移入できるようにするのかが、私は大事だと思っています。

和田 確かにそうですね。文化の違いはもちろん、日本と韓国の演技の違いもドラマの中で感じ取れたんです。その解決策じゃないですけど、カンパニーの皆さんとセッションしていって、現場でどう作っていくかだと思います。

 僕が舞台で一番大切にしていることは、お客様との関係性。作品の世界にお客様をどれだけ誘えるか、その世界観を一緒に生きているという共感性みたいなものを大事にしていきたいと思っています。

 韓国では、ドラマのロケ地もまわってきたんですが、僕にとって、リアルでその場所を見るっていうことが、その役を生きる上でとても大切なんですよね。ドラマ「ヴィンチェンツォ」でソン・ジュンギさんが見ていた景色を実際に見ることができたのが、何よりも舞台に生きてくると思います。

――今回の「ヴィンチェンツォ」のミュージカル化は日本のエイベックス・ピクチャーズさんからスタジオドラゴンさんにご提案があったんですよね。

 ミュージカル化のお話を受けたときは、率直に言ってとても嬉しかったですね。実は、私たちスタジオドラゴンもミュージカル化についてちょうど考えていたときだったんです。

 「ヴィンチェンツォ」がミュージカル化に適していると思った理由は三つあります。まずは、物語の舞台となる場所が限られている点。1ヶ所はバベルグループの会社、もう1ヶ所は法律事務所、そしてクムガプラザなので、舞台で表現するのにはとても合っていると思います。

 二つ目は強烈な印象を与えるキャラクターたちの魅力をミュージカルで表現したら、とても面白いと思います。そして、三つ目はクスッとするようなコミカルさと目を見張るアクション、さらにラブストーリーも含まれている多様な魅力があるドラマなので、そういった部分もミュージカルに合っていると思います。

和田 ユさんがおっしゃったように、キャラクター1人1人が魅力的で、場面転換が少ないと思うので、役者それぞれの稽古場であったりとか、過ごしてきたものが舞台上に乗りやすいと思うんですよね。

 クムガプラザの住民の人たちは実際本当に仲が良い人たちじゃないですか。それをどれだけ稽古場で僕たちが関係性を作って舞台上に乗せられるかが、作品の魅力に関わってくるのかなと思いますね。

 キャラクターの個性がとても強いので、それを舞台で表現したときに、観客がそれをどう受け取り、それに対してどう感じるか。役者と観客の共感で舞台がどのように作られるかが大事な部分になってくると思います。

2023.07.29(土)
文=CREA編集部
写真=榎本麻美
ヘアメイク=山本昌子
スタイリスト=石橋修一