この記事の連載

 「包丁と青とうがらし」を意味する京言葉をタイトルにした『ながたんと青と―いちかの料理帖―』。昭和26(1951)年の京都を舞台に、夫を戦争で亡くした老舗料亭「桑乃木」の長女、いち日(いちか・34歳)が、有力者の家の三男、周(あまね・19歳)を婿に迎える、グルメラブストーリーです。いち日は、破綻寸前の家業の経営を立て直しながら料理人としての腕を極めていこうと奮闘します。実写ドラマ化もされた同作について、作者の磯谷友紀さんにお聞きしました。

前篇を読む
マンガ第1話を読む


──『ながたんと青と』のタイトルは、どうやって決めたのですか?

磯谷 舞台を京都にしようと決めた時に、京都の言葉で「○○と○○」か、「○○の○○」というタイトルにしたくて、辞典などでいろいろ調べました。最初は「いち日のおくどさん」というタイトルも考えたんですけど、たくさんあがってきた単語の中で「ながたん(包丁)」と「青と(青とうがらし)」の組み合わせがとてもしっくりきたので、『ながたんと青と』に決めました。

──本作ではとにかく好きなものを描こうと思っていたそうですね。

磯谷 はい。恋愛、料理、京都、戦後間もない頃の日本、など、好きなものを書きだしていく中で、だんだん設定が固まっていった感じです。私はもともと年の差恋愛が好きだったので、年の差の恋愛ものにしようとか、ホテルや調理についても描くけど、仕事ものにしたいとか……。あとは、メガネ男子が好きなので、主人公のパートナーは絶対メガネキャラにしようといった感じです。

──磯谷さんの作品には、年の差カップルがよく登場しますが、女性が年上というのは初めてですよね。女性が15歳も年上という設定は、どのように生まれたのですか?

磯谷 昔は「年の差」というと、男性が女性より一回り上とか、そういう設定を多く描いていたんですけど、いまにして思えば、自分が若くて、年上の男性のほうが話しやすかったからなんですよね。いまは年下のかわいさも魅力的だなと思うようになってきたので、そんな気持ちを素直に描いてみました。

 推したちも年下が多くなってきているので、彼らの行動を眺めたり、心の動きを考えたりするのが楽しいんですよね。そういうのを反映したりしています。

2023.07.08(土)
文=相澤洋美