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 「包丁と青とうがらし」を意味する京言葉をタイトルにした『ながたんと青と―いちかの料理帖―』。昭和26(1951)年の京都を舞台に、夫を戦争で亡くした老舗料亭「桑乃木」の長女、いち日(いちか・34歳)が、有力者の家の三男、周(あまね・19歳)を婿に迎える、グルメラブストーリーです。いち日は、破綻寸前の家業の経営を立て直しながら料理人としての腕を極めていこうと奮闘します。15歳離れた年の差夫婦を描いた、作者の磯谷友紀さんに、作品に込めた思いを聞きました。

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──『ながたんと青と』は、年の差恋愛物語であり、料理レシピが織り込まれたグルメものでもあり、働く女性のお仕事マンガでもあります。もりだくさんのストーリーはどのように生まれたのでしょうか。

磯谷 最初は、ホテルの調理や経営についての物語を描きたいと思っていたんです。でも久しぶりに恋愛ものも描きたいなと思って、そこからアイデアを煮詰めていきました。

 あまり規模の大きいホテルではなく、こぢんまりとした、でも伝統と格式のある静岡あたりのクラシックホテルを舞台にしようと考えていた時に、京都に詳しい担当さんが「京都のほうがいいんじゃない?」と言ってくださって。私も京都は好きなので「じゃあ京都にしましょう」と決まっていきました。

──設定をホテルではなく料亭に変えたのは、舞台を京都に決めたからですか?

磯谷 京都を舞台にしたら料亭のほうがしっくりきた、というのはあります。でもいちばんの理由は、経営ではなく調理をメインテーマにするのなら、ホテルより規模が小さいほうが描きやすいと思ったからです。

 いち日を最初ホテルの厨房で働かせたのは、もともと、ホテルものを描こうといろいろ調べていたのが活かせると考えたことと、一回洋食の世界に身を置いた人にすれば、洋食も和食も幅広く描けて楽しいんじゃないかと思ったという、安直な理由からです(笑)。

──お料理がお好きなんですね。ご自分でも料理はされるのですか?

磯谷 食べるのは大好きです。料理は自慢できるほどではなく、普通に自炊する程度です。
 両親が外食好きで、子どもの頃、いろいろなところに食事に連れて行ってもらった原体験から「楽しくおいしく食べる」というのが自分のベースにある気がします。

2023.07.08(土)
文=相澤洋美