『美少女戦士セーラームーン』の月野うさぎ役で名を響かせ、一躍人気声優になった三石琴乃さん。『新世紀エヴァンゲリオン』で葛城ミサト、『ドラえもん』ではのび太の母・野比玉子を演じるなど、声優界の第一線で活躍し続けてきた。

 最近では『リコカツ』をはじめTVドラマにもレギュラー出演。2024年に放送される大河ドラマ『光る君へ』では時姫を演じることも発表され、活動に新たな展開を見せている。

 声優キャリア35年、自身の半生や仕事への矜持などを綴った 『ことのは』を発売した三石さんに、人生の転機や、仕事と家庭の両立の苦労について率直に語ってもらった。(全2回の1回目/後編を読む)

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とにかくがむしゃらだった月野うさぎ役

──3月に発売された三石さんの著書『ことのは』は、声優業界の裏側や厳しさについてもまっすぐに書かれていて、声優業への愛と真摯な姿勢を感じました。

三石琴乃(以下、三石) 華やかに見える声優業界ですが、自分で芸事を磨かないと生き残れないし、不平等やハラスメントに遭遇することもあります。「ここは芸能界だよ。決して甘くないよ。」と。覚悟なくして(声優業界に)来ちゃうと大変ですからね。

──数ある声優のエッセイ本の中でも、『ことのは』は内容も文章もすごく端正な佇まいの印象です。

三石 構成さんのお力もあります。普段の私は全然ですよ(笑)。書籍の企画をいただいた時は、自分の仕事のスタンスや感覚を言葉でまとめるなんて絶対に無理だと思ってましたから。

 台本があるから知的な役もできるし、声優・三石琴乃が存在できるので。だからメールで1度、「1冊の書籍に耐えうる中身のある人間でもございません」とお伝えしたんですけど、「そんな三石さんだからこそ」と熱いお返事をいただいて、おまかせしてもいいかなと感じたんです。

──『美少女戦士セーラームーン』で月野うさぎ役は三石さんの声優業を代表する役として、真っ先に名前が上がるキャラクターですね。当時を振り返って、作品の爆発的な人気をどう感じていましたか。

2023.06.26(月)
文=川俣綾加