この記事の連載

 家事、子育て、毎日の暮らしのこと……北欧の日常について、デンマークに住む3家族に丁寧に取材し、その豊かな暮らしのヒントをわかりやすく紹介する本『北欧の日常、自分の暮らし - 居心地のいい場所は自分でつくる –』(ワニブックス刊)より、記事を一部抜粋してお届けします。

 「心地よく暮らすためのヒント」を紹介しているだけでなく、なぜ北欧の人たちがそのような行動をとることになったのか、その背景が書かれているのも本書の魅力のひとつ。北欧のリアルをもっと深く知りたい人は、どうぞ書籍にてお楽しみください。


北欧の家に必ずひとつはある、イケアの家具

 スウェーデン人の夫が子どものころ、ママの寝室にはいつもイケアカタログが置いてありました。寝る前にカタログをめくりながら、家のことをあれこれ考えるのが何よりも楽しみだったそう。

 「イケアに行く」のは、家族の一大イベントだったと言います。車に引っ掛ける荷台をつけて、日用品から家具までたくさん持ち帰り、家に着いたら家族みんなで家具を組み立てる。「出かけるところから組み立てまで、ぜんぶが楽しかった!」と、夫は今でもよくそのときのことを話します。

 スウェーデンの実家には、30年ほど前に買ったというイケアのワードローブが現役で活躍していますし、昔から北欧のひとたちの生活に、イケアは欠かせない存在だったんだなぁと感じます。

 わたしのイケアとの出会いは、さかのぼること15年ほど前。長野の大学を卒業し、就職のために神奈川へ引っ越しをし、働きはじめたのがイケアでした。そのころ、ちょうどイケアが日本へ本格的に上陸するタイミングで、わたしは店舗のオープニングスタッフでもありました。

 まだまだ働くということにも慣れずにいた中、お店がオープン。入り口からぶわーっとお客さんがひっきりなしに入ってくる、あの光景を今でもハッキリと覚えています。焦るわたしのとなりで、「今日を楽しもう!」とわくわくが隠し切れないスウェーデン人マネージャーがいたことも忘れていません。北欧の働き方も、暮らし方も、休日に対する彼らの情熱も、家のこだわりも、イケアを通してたくさん学びました。

 ちなみに、夫との出会いもイケア。わたしが働いていた部署に、夫がアルバイトで働きに来たのがきっかけです。引っ越しをしたら「まずはイケアへ行く」というのは、出会ったころからずっと変わっていません。

2023.05.25(木)
文=桒原さやか
写真=松浦摩耶