翌日が雪だったんですが、その日は妊活休業していた奥さんの久々の復帰の日だったんです。僕がはじめて、人生で一人で子どもの面倒を見なくてはならないという日で……。

新谷 おさむさんにとっても、いろいろなものが重なっていた。

鈴木 そうです。でも朝まで帰れないし、朝に帰ったら奥さんも怒りを爆発させまして。でも、何があったかもよく言えないじゃないですか。本当に長い一日でしたね。

新谷 その緊迫した雰囲気が小説にはビビッドに書かれていますね。生放送をする日の朝、「タクヤ」というメンバーと電話しているシーンも印象的です。

「ベビーの面倒はちゃんと見ろよ」

 彼らしい言葉。少しだけ僕の中にたまっていた緊張が抜けた。

鈴木 まさに、あのときの自分を反映しています。その日、妻が仕事復帰で初めて一人で子どもの面倒を見るわけですが、当然泣くんですよね。彼と話しているときの電話口でも泣いていた。

 いま、質問が来ていますが、「このシーンが書けてよかったというのはどこですか」と。ひとつは「シンゴ」が、最終回が終わってスタッフが撤収しているときに、自分たちが歌ったステージにキスをするのをプロデューサーが見る場面。あの日のことを書くために、改めて周囲の人にあの頃のエピソードを聞いたんですが、そういうことを書けたのが良かったですね。

 

「僕も加害者。逃げちゃいけない」

新谷 一番書いていてつらかったのはどこですか? 「ソウギョウケ」が出てくるあたりでしょうか。

鈴木 そうですね。あの部分はやはり……。あとは自分も加害者だという点で、プロデューサーの「ハルタ」と演出の「ノグチ」と「僕」が生放送の台本を持って、「ツヨシ」の控室に入っていくシーンですね。あのときのことって、今でも3人で話すんですが、書くのがとにかくつらかった。

 あのとき現場にいて、究極を言えば「うるせえバカヤロー!」と暴れて抵抗することもできたわけじゃないですか。「お前ら、何してんだ!」と言って。でも結局、それもしていない。だから大事なのは、自分もあの場に作り手として存在していて、僕も加害者であるということ。そこを忘れちゃいけないし、そこから逃げちゃいけないと思ったんですね。

2023.05.23(火)
文=鈴木おさむ、新谷 学