鈴木 まず、新谷さんが「文藝春秋」の編集長になったとき、僕も『僕の種がない』という男性不妊の小説を出したタイミングだったので、巻頭随筆を書かせてもらったんですね。放送作家も作家のはしくれなので、「文藝春秋」に書かせていただくことはとても光栄だと思っていました。

 その後、新谷さんから「相談がある」という連絡をもらって、その時点で嫌な予感がしたんですが(笑)、食事をしながら話をしたら、「文藝春秋」創刊100周年記念号でSMAPの謝罪放送から解散に至るまでのことを書いてもらえないかと。

 最初は「何を言っているんだ、この人は?」と。普通の人だったらすぐに断る話ですよ。でも、自分の中でふつふつしているものがあって。僕はSMAPと仕事をしてきて学んだことを、どこかで小説にしたいという思いは以前からあったんです。

 ただ、新谷さんからはファンの発想としては見たくないだろうというスキャンダラスな面も含めて小説で、と言われた。やっぱり無理かもしれないと悩んでいたときに、ハッとしたのは、新谷さんが「まだ世の中が興味あるうちに」と言ったんです。

 僕らは当事者なので、70歳になっても80歳になってもあの日のことを忘れるわけがない。でも、昔のキャンディーズや山口百恵さんに対して、ある世代は熱いですけど、ほぼ風化されていくじゃないですか。僕が当事者だから、傷が深いままだと思っていたけれど、今こそチャレンジしてもいいかもしれないと思った。

 あと、実は去年の9月に、仲良しで占い師でもあるゲッターズ飯田から「今年の秋くらいに、自分の何かをまとめる大きな仕事がある」と言われていて。何かをまとめるすごい仕事……映画かな? と思っているときに新谷さんから話があった。そういう縁もあって、書いてみようと思ったんですね。

新谷 この相談でOKをもらうハードルは高いと思っていました。普通の人なら、絶対に断るよなと。ただ、おさむさんは普通の人じゃない。これは誉め言葉ですが、リスクはあるけどめちゃめちゃ面白くなる道と、安全でほどほどに面白い道があれば、本能的に前者の方に引っ張られる人間だ、それに忠実な人だろうという予感があったので。

2023.05.23(火)
文=鈴木おさむ、新谷 学